離婚で慰謝料が発生する場合、慰謝料の代わりに家やマンションをもらいたいと考える人もいるでしょう。
状況によっては、離婚の際の慰謝料の代わりに、家やマンションをもらうことは可能です。
こちらでは、離婚時に慰謝料として家やマンションをもらうにはどうすれば良いか、住宅ローン返済中の場合はどうなるのか、またもらうことで税金はかかるのかなどについてわかりやすく説明します。
- 離婚の際、慰謝料の代わりとして家やマンションをもらえるのはどのような場合かがわかる
- 住宅ローン返済中の家やマンションを慰謝料の代わりにもえるのかがわかる
- 慰謝料の代わりではなく、財産分与として家やマンションをもらう方法がわかる
- この記事はこんな人におすすめ!
- 慰謝料が発生する離婚をしそうな人
- 慰謝料の代わりに家やマンションをもらう方法を知りたい人
- 慰謝料として家やマンションをもらう場合の注意点を知りたい人
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もくじ
1.慰謝料と財産分与の違いについて
- 慰謝料とは、相手が離婚の原因を作り、それによって心身が傷ついた場合に請求できるもの
- 財産分与とは、離婚の際に夫婦で築いた共有財産を半分ずつに分けること
- 慰謝料と財産分与とは別物なので、慰謝料を払う立場であっても財産分与を受けることができ、両方を相殺することもできる
慰謝料として家やマンションをもらうことができるかの説明の前に、まず慰謝料と財産分与の違いについて確認しておきましょう。
- 慰謝料とは相手に離婚の原因がある場合に請求できるもの
- 財産分与とは夫婦で築いた共有財産を半分に分けること
- 慰謝料と財産分与とは別物だが相殺することもできる
それぞれについて、わかりやすく説明します。
1-1.慰謝料とは相手に離婚の原因がある場合に請求できるもの
慰謝料は、離婚をする時に相手に「有責性(離婚の原因を作った責任)」がある場合に請求できます。
慰謝料を請求されるのは、次のような場合です。
- 不倫をした
- DV(配偶者暴力)があった
- モラハラ(モラルハラスメント:精神的DV)があった
- 生活費を払ってくれなかった
せっかく結婚生活を送っていたのに、相手のせいで離婚を余儀なくされたら、その人自身や人生は大変傷つきます。
そこで、その傷ついた気持ちをおさめるために、必要となるのが慰謝料です。
慰謝料は、基本的には金銭で見積もるため、現金で支払ってもらうことになります。
離婚の原因がどちらにもなく、性格の不一致などでお互い合意のうえで離婚した場合は、慰謝料は発生しません。
1-2.財産分与とは夫婦で築いた共有財産を半分に分けること
財産分与とは、離婚の際に夫婦で築いた財産を分けることで、夫婦それぞれが受け取れる割合は、原則として2分の1ずつです。
どちらかに有責性があった場合に発生する慰謝料とは異なり、財産分与はすべての離婚において行われます。
結婚後に夫婦で購入した家やマンションも財産分与の対象です。
財産分与の割合を決める際に、名義や収入差は関係ありません。そのため、家やマンションが夫の単独名義で妻が専業主婦であっても、夫と妻、それぞれが半分ずつもらうことができます。
離婚で家やマンションをどのように財産分与するかについては、「離婚で家やマンションなどの不動産を財産分与する方法について解説」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
1-3.慰謝料と財産分与とは別物だが相殺することもできる
慰謝料と財産分与とは、それぞれが持つ意味や意図するものが異なるため、別物であるということを理解しておくことが大切です。
たとえば、妻の不倫が原因で離婚になった場合、妻が夫に慰謝料を支払うことになりますが、財産分与を受ける権利がなくなるわけではありません。
また、慰謝料を請求できる場合は、慰謝料の請求とは別に、財産分与を受けることが可能です。
したがって、相手に支払う慰謝料と受け取る財産分与とを相殺することもできます。
慰謝料を支払う立場であっても、財産分与を受けることができるという点を押さえておきましょう。
2.慰謝料の代わりに家やマンションをもらうことは可能
- 離婚時の夫婦の話し合いで決めた場合は、家やマンションを慰謝料の代わりとして受け取ることができる
- 慰謝料を払う側が現金を持っていない場合は、慰謝料の代わりに家やマンションを受け取ることができる
- 慰謝料の代わりの家やマンションの価額が慰謝料の額よりも大きく上回っている場合は、贈与とみなされて贈与税の対象になることがあるので注意する
一般的に、慰謝料は金銭で見積もられて現金で支払われますが、慰謝料の代わりに家やマンションをもらうことは可能です。
次のような場合は、慰謝料の代わりに家やマンションをもらうことができます。
- 慰謝料を家やマンションでもらえるように話し合って決めた場合
- 慰謝料を支払う側が現金を持っていない場合
一つずつ確認していきましょう。
2-1.慰謝料を家やマンションでもらえるように話し合って決めた場合
離婚の際、夫婦で話し合いをしてどちらもが納得すれば、慰謝料の代わりに家やマンションをもらうことができます。
ただし、慰謝料の額よりも、家やマンションの価値(価格)が大きく上回っているような場合は注意しなければなりません。
なぜなら、慰謝料を超える分の額については、贈与があったものとみなされるため、贈与税の課税対象となる恐れがあるからです。
2-2.相手が現金を持っていない場合
先に述べたように、慰謝料は基本的に金銭で見積もりますが、家や車などの「物」によって支払ってもかまわないことになっています。
そのため、慰謝料を請求した相手に現金がない場合は、慰謝料を家やマンションで支払ってもらうことが可能です。
このように、慰謝料の代わりに「物」で支払いをすることを「代物弁済(だいぶつべんさい)」と言います。
不動産だけではなく、貴金属や絵画、骨董品や宝石などの「物」で支払うことや、生命保険などの「債権」を譲り渡すことによって支払うことも可能です。
ただし、この場合も、慰謝料の額よりも代物弁済の価格が大きく上回っているようであれば、慰謝料を超える分については贈与があったものとみなされます。注意しましょう。
3.慰謝料や財産分与にかかる税金について
- 離婚時の夫婦の話し合いで決めた場合は、家やマンションを慰謝料の代わりとして受け取ることができる
- 慰謝料を払う側が現金を持っていない場合は、慰謝料の代わりに家やマンションを受け取ることができる
- 慰謝料の代わりの家やマンションの価額が慰謝料の額よりも大きく上回っている場合は、贈与とみなされて贈与税の対象になることがあるので注意する
慰謝料や財産分与として家やマンションを受け取った際に、税金はどうなるのだろうと心配している人も多いでしょう。
ここでは、慰謝料や財産分与の税金について説明します。
- 慰謝料や財産分与には原則として税金は課せられない
- 場合によっては慰謝料や財産分与に課税される
それぞれについて、わかりやすく説明します。
3-1.慰謝料や財産分与には原則として税金は課せられない
離婚の慰謝料や財産分与として受け取った財産には、原則として税金はかかりません。
したがって、慰謝料代わりや財産分与として家やマンションを譲ってもらっても、基本的には贈与税や不動産取得税といった税金は発生しません。
ただし、家の価額と慰謝料の額とが大きく違っているような場合は、課税対象になることがあるため注意が必要です。
3-2.慰謝料や財産分与に課税される場合
原則として、離婚の際の慰謝料や財産分与には課税されませんが、すべての場合において税金がかからないわけではありません。
慰謝料や財産分与として譲り渡した家やマンションが購入したときよりも値上がりしている場合は、「譲渡所得税(じょうとしょとくぜい)」が課せられます。
譲渡税が課せられるのは、家やマンションを譲り渡した側です。
また、財産分与や慰謝料として受け取った財産が相場よりも多すぎる場合、「相場との差額分」が贈与であると見なされて、贈与税が課税される可能性があります。
この場合、贈与税が課せられるのは受け取った側です。
さらに、次のような場合にも、贈与税が課せられることがあります。
- 特に離婚の原因となるような落ち度はなかったのに、離婚の財産分与としてすべての財産を相手に渡す場合
- 離婚を偽装して、財産を相手名義に変えるために籍を抜くような場合
4.住宅ローン返済中の場合は注意が必要
- 住宅ローン返済中の場合、家やマンションの名義を勝手に変更することはできない
- 住宅ローンが残っている家やマンションの名義を変更するには、原則としてローンを完済する必要がある
- 慰謝料の代わりにローンを支払ってもらうという約束は、慰謝料をもらう側にとってリスクが高すぎるので避けるほうが良い
離婚時に、住宅ローン返済中の家やマンションを慰謝料の代わりにする場合は、別途検討が必要となります。
特に、次のような点に注意が必要です。
- 住宅ローン返済中は家の名義を勝手に変更できない
- 慰謝料の代わりに住宅ローンを返済してもらうのはリスクが大きい
具体的に、どのように注意すれば良いかを説明します。
4-1.住宅ローン返済中は勝手に名義を変更できない
住宅ローンを返済中の家やマンションは、ローンを組んでいる金融機関の合意なしに勝手に所有者の名義を変更できません。
なぜなら、住宅ローンが残っている家やマンションには、抵当権が設定されているからです。名義を変更したいのであれば、住宅ローンを完済するかローンの借り換えをしなければなりません。
住宅ローン完済前に勝手に名義変更をすると、金融機関から契約違反を主張されて、残っている住宅ローンの一括払いを求められてしまう可能性があります。
家やマンションの名義変更の所有権移転登記の原因が、慰謝料代わりの代物弁済であっても財産分与であっても同じです。
したがって、住宅ローンが残っている家を慰謝料の代わりにして名義を変更するのであれば、住宅ローンを完済する必要があります。
4-2.慰謝料代わりに住宅ローンを返済してもらうのはリスクが大きい
離婚の際に家やマンションに住宅ローンが残っている場合、慰謝料代わりとして「残っている住宅ローンの返済」を約束するケースがあります。
ただし、「慰謝料代わりに住宅ローンを払う」というのはあくまで夫婦間の約束であり、金融機関にとっては無関係な事情です。
そのため、支払われるはずの住宅ローンが支払われなかったら、金融機関は裁判所に競売申し立てをして家を競売にかけ、住んでいる人は強制退去させられることを理解しておかなければなりません。
慰謝料の代わりに住宅ローンを支払うという約束をするのは、できれば避けるほうが良いでしょう。
住宅ローンを滞納したらどうなるかについては「住宅ローンを滞納・延滞するとどうなる?返済できないときの対処方法」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
5.家やマンションを財産分与するという選択肢もある
- 夫婦で財産分与の分け方を話し合い、慰謝料分として財産分与で家やマンションをもらうこともできる
- 住宅ローン返済中で家やマンションの名義を変更できないなどの場合は、売却した代金を分けるという方法もある
- 離婚で家やマンションを売却しても住み続けたい場合は、リースバックという方法もある
離婚の際、家やマンションをもらいたいのであれば、次のような選択肢もあります。
- 慰謝料ではなく財産分与として家やマンションをもらう
- 家やマンションの売却代金を財産分与する
それぞれについて、説明します。
5-1.慰謝料ではなく財産分与として家やマンションをもらう
離婚時に、慰謝料として家やマンションをもらうのがむずかしい場合は、財産分与として家をもらうという方法もあります。
法律的な理解では、財産分与の割合は夫婦それぞれ2分の1ずつとなりますが、夫婦間の話合いによって財産分与割合を決定するときには、どちらの取得分をどれだけに設定してもかまわないことになっているからです。
そこで、家をもらいたいなら、慰謝料ではなく財産分与として家やマンションを全部もらう取り決めをすることもできます。
この方法だと、家の所有名義を夫から妻にする「所有権移転登記」の「原因」が「慰謝料の代物弁済」ではなく「財産分与」になるだけなので、問題なく妻に家の所有権の全部を移転することが可能です。
5-2.家やマンションの売却代金を財産分与する
慰謝料や財産分与として家をもらうのがむずかしい場合や住宅ローンが残っていて名義変更ができない場合は、家やマンションを売却するというのも一つの手です。
特に、住宅ローン返済中の場合は、いくら約束をしても相手側が住宅ローンを支払ってくれなくなる恐れがあります。
住宅ローンの完済を待つにしても、完済するまでの約20年~30年といった月日の中で、元夫の身に金銭面や健康面で何も起きないという保証はどこにもありません。
また、名義人である夫に、勝手に売却されてしまう恐れもあります。
そのような場合は、家やマンションを慰謝料の代わりや財産分与として受け取るのではなく、売却代金を財産分与として受け取れば安心です。
離婚時の家の名義については「離婚後も夫名義の持ち家に妻が住むには?住宅ローンの有無別に紹介」で、名義人である夫に売却されるリスクについては、「離婚で旦那名義の家やマンションを勝手に売却されるリスクと対策を解説」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
5-2-1.リースバックなら売却しても住み続けられる
離婚で家やマンションを売却することになっても、どちらか一方がそのまま住み続けたい場合もあります。
そのようなときにおすすめなのが、リースバックです。
リースバックを利用すれば、家やマンションを売却しても、賃貸としてこれまでと同じように住み続けることができます。
リースバックについては、「【リースバックのまとめ】家を売っても住み続けられる!利用方法や注意点を詳しく解説」で説明しています。ぜひ一読してみてください。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 慰謝料とは、離婚の原因を作った有責者に対して、傷つけられた側が請求できるものである
- 離婚の際の財産分与とは、夫婦で築いた共有財産を原則として2分の1ずつに分けること
- 慰謝料は現金で支払われることが多いが、家やマンションを慰謝料の代わりにすることはできる
- 慰謝料や財産分与の相場よりも高い価格の家やマンションを受け取った場合は、譲渡所得税や贈与税などの税金が課せられる場合があるので注意が必要
- 慰謝料の代わりに住宅ローンを返済するという約束は、返済が滞る、勝手に売却されるなどのリスクがあるため、できれば避けるようにする
- 家やマンションをもらうのではなく、売却した代金を慰謝料や財産分与として受け取るという方法もある
- 住宅ローン返済中の家やマンションは勝手に名義変更できないため、売却した代金を財産分与するのがおすすめ
- 離婚で家やマンションを売却しても住み続けたい場合は、リースバックを利用するという手もある
離婚の際、慰謝料の代わりとして、家やマンションをもらうことは状況によっては可能です。
また、慰謝料の代わりではなく、夫婦で話し合いをして、財産分与として家やマンションをもらうこともできます。
ただし、住宅ローン返済中の場合は、名義を勝手に変更できません。
名義が変更できないため、慰謝料の代わりに住宅ローンを返済してもらうという方法を取るケースもあります。しかし、ローンの返済が滞ったり勝手に売却されたりするなどのリスクがあるため、あまりおすすめではありません。
そのような場合は、家やマンションをもらうのではなく、思い切って売却するというのも一つの手です。
慰謝料の代わりや財産分与として家やマンションをもらうにしても、売却して代金を分けるにしても、そもそも、今、売りに出したらいくらぐらいで売れるのかということは必ず知っておく必要があります。
とはいえ、売るかどうか決まっていないのに「不動産会社に査定してもらう」ということにハードルを高く感じる人は少なくありません。
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イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。