離婚するとき、親名義の土地に夫婦が居住する家を建てているケースがあります。その場合、家をどうすれば良いのかと悩んでいる方も多いでしょう。
こちらでは、離婚時にどちらかの親名義の土地に家がある場合の解決方法について説明します。
この記事で具体的にわかること
- 親名義の土地に子夫婦が家を建てた場合の権利関係について
- 離婚で親名義の土地に建てた家を分ける方法について
- 親名義の土地に建てた家に住宅ローンが残っている場合の対処法について
- この記事はこんな人におすすめ!
- 親名義の土地に建てた家があり、離婚することになった人
- 離婚の財産分与で、親名義の土地に建てた家の分け方を知りたい人
- 離婚で、親名義の土地に建てた家に残っている住宅ローンをどうすれば良いかわからない人
1.親名義の土地に家を建てた場合の権利関係
夫婦が家を建てるとき、どちらかの親の所有する土地を使わせてもらうケースはよくあります。
たとえば、次のようなケースです。
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ケース①:夫の実家の土地に、夫婦共有名義の家を建てた
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ケース②:妻の実家の土地に家を建てたが、夫が住宅ローンを負担
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ケース③:夫婦共有名義で家を建てたが、土地は親が購入したので親名義
親の土地を使わせてもらうと土地購入費用が不要になり、建物代に費用をかけられるので、良い家を建てやすい点がメリットです。
また、親名義の土地に家を建てるケースでも、住宅ローンの利用に問題はありません。金融機関では、2親等以内の人が土地所有者の場合、土地名義人がそのままでも住宅ローン審査に通ることが一般的だからです。
ただし、住宅ローン借入の際には、建物だけではなく土地も担保に入れることになるため、土地所有者である親の了承が必要になります。
1-1.親子間には「使用貸借契約」が成立している
親の土地に子供である夫婦が家を建てた場合、土地は「親の所有物」、建物は「夫婦(双方または一方)」の所有物です。
そして、多くの場合、夫婦は親に借地料を払っていないため、親と子供との間では「使用賃借契約」が成立している状態になります。
「使用賃借契約」とは、無償で貸し付ける契約のことです。もし土地の使用料を支払っているのであれば、「賃貸借契約」になります。
「使用賃貸借契約」は、有償の「賃貸借契約」よりも貸主や借り主の義務が軽減されているため忘れがちになりますが、土地はあくまでも「親の所有物」であるため、夫婦が離婚するからといって、子供が勝手に売却することは不可能です。
1-2.離婚時の「土地と家」の権利関係を整理する
離婚をする際には、まず「家と土地の名義がどうなっているのか」を正しく理解することが重要です。
まず、次の項目について、どのようになっているかを整理しましょう。
項目 | 考えられるケース | 離婚時の主な問題点 |
---|---|---|
土地の名義 | 親の名義(夫または妻の親) | 土地の売却や利用には親の同意が必要 |
家の名義 | 夫名義、妻名義、または夫婦共有名義 | 家を売却・住み続ける場合、名義の調整が必要 |
住宅ローン | 夫単独、妻単独、夫婦共有 | 住宅ローンが残っている場合の支払い義務は誰か |
具体的には、次のような確認が必要です。
-
家と土地の名義を確認する
→ 家の名義、土地の名義、住宅ローンの名義がどうなっているかを整理する。 -
親の意向を確認する
→ 土地の所有者(親)が売却を許可するか、またはどちらかが住み続けることを認めるかを話し合う。 -
住宅ローンの残債を確認する
→ 家の売却が可能か、またはローンを引き継ぐことができるかを確認する。 -
税金や名義変更の手続きについて把握する
→ 贈与税、不動産取得税、登記変更の手続きが必要になる可能性があるかを確認する。
たとえば、「家は夫婦の共有財産だから売却して分けたい」と考えても、先に述べたように、土地が親名義である場合、勝手に売ることはできません。
また、家の名義が夫婦のどちらか一方だった場合でも、住み続けるためには土地の所有者(親)との交渉が必要になります。
次の章では、具体的にどのような選択肢があるのかを見ていきましょう。
2.離婚時に親の土地に建てた家を分ける方法は4種類
親名義の土地に夫婦の家を建てると、離婚時の財産分与はかなり複雑になります。
なぜなら、家そのものは夫婦の財産分与の対象になりますが、土地は親名義なので財産分与の対象から外れるためです。
「建物のみ」を財産分与するにはいろいろな工夫が必要になります。
親名義の土地上の家を分ける方法は、次の4種類です。
- 土地所有者である親の実子が家に住み続ける
- 土地所有者である親と血のつながりがない嫁や婿が家に住み続ける
- 家のみを売却する
- 家と土地を売却する
それぞれの方法について、わかりやすく説明します。
財産分与(ざいさんぶんよ)とは?
財産分与とは、夫婦が離婚するときに、婚姻時(結婚していた期間)に形成した資産を分け合うことです。預貯金や株式、生命保険や不動産など財産が対象になるので、家も財産分与対象に含まれます。基本的な法律の考え方によると、財産分与の割合は夫婦が2分の1ずつです。
2-1.①親の実子が住み続ける方法
家に親の実子が住み続ける場合、たとえば妻の親の土地に家を建てたケースで、離婚後も妻と子どもが家に住み続けるケースなどです。
この場合、親子間なので大きな問題にはなりにくいです。これまでと同じように、親に借地料を支払う必要などもありません。
夫婦間で離婚後の住宅ローンの支払い方法などを決めれば、そのあとは妻がそのまま家に住み続けることができます。
家の名義変更については「離婚後、家を妻名義に変更できる?住宅ローンとの関係を徹底解説!」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
2-2.②実子ではない嫁や婿が住み続ける方法
次に土地所有者である親とは血のつながりのない、婿や嫁が家に住み続けるパターンをみてみましょう。
たとえば、夫の親名義の土地に家を建てて、妻と子どもが家に住み続けるケースなどです。
この場合、土地所有者である親と土地の借主である居住者との間に血縁関係がないので、これまでのように使用貸借関係を継続しにくくなります。
そこで、新たに「借地契約(しゃくちけいやく)」を締結して借地料を払う方法が考えられますが、いったん借地権を設定すると、借地人(しゃくちにん:借りている側)は非常に強く保護されるので、簡単には退去を求められなくなります。
普通借地権の場合、最低でも存続期間が30年となりますし、契約期間が経過したときにも更新拒絶するために正当事由が必要です。一般の定期借地権では、事業用でない限り50年間存続させる必要があります。
このように、借地権を設定すると、親による土地利用が大きく制限されることに注意が必要です。
2-3.③家のみを売却する方法
親の土地に夫婦の居住用の家を建てた場合、家のみを売却することも可能です。家だけの売却であれば、土地は親名義のまま残せます。
ただし、この場合だと「借地権付きの家」として売却することになり、売却価格には底地(そこち)の価格が含まれません。
借地権付きの家は、家と土地をまとめて売るよりも売却代金が低くなります。また、新たに建物を購入した所有者と親との間で借地契約の締結が必要となり、親は知らない人と契約関係を継続しなければなりません。
普通借地権を設定するとしても最低30年間は土地を自由に利用できなくなりますし、将来親が亡くなって相続が起こったときには借地権つきの土地を遺産分割しないといけないので、考え方が複雑になります。
借地権の家の売却については、「借地の家は売却できる?地主の承諾・査定と価格相場・高く売る方法を解説!」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
2-4.④家と土地を売却する方法
親が土地の継続所有を望まないなら、家と土地をまとめて売却する方法もあります。
それなら売却後に借地権を設定することもありませんし、将来の土地相続のトラブルの心配なども不要です。
ただし、土地ごと売却するには、所有者である親が土地の売却に納得する必要があります。
親にしてみれば「せっかく子どもや孫が住むために土地を提供したのに」という気持ちがある場合も多く、その気持ちを裏切ることになりますし、迷惑をかけることにもなってしまいます。
先祖代々の土地などで守る必要がある場合には、売却に同意してもらえない可能性も高くなります。
売却を検討している方は「離婚で家やマンションを売る時の確認ポイント5つと売却後にやるべきことを解説!」も併せてご覧ください。
3.親の土地に建てた家の住宅ローンが残っている場合
親の名義の土地に家を建てて住宅ローンが残っている場合、単純に売却したり住み続けたりすることがむずかしくなるケースが多く、慎重な対応が必要です。
住宅ローンの扱いを誤ると、離婚後も経済的な負担が続くだけでなく、信用情報(ブラックリスト)に影響を及ぼす可能性もあります。
ここでは、親の土地に建てた家の住宅ローンが残っている場合に考えるべきポイントを解説します。
3-1.住宅ローンが残っている場合の基本的な考え方
住宅ローンは基本的に契約者に返済義務があるため、離婚したからといって自動的に免除されるわけではありません。
特に、夫婦で連帯債務や連帯保証を組んでいる場合、どちらが支払いを続けるのか明確に決める必要があります。
また、当然ですが、住宅ローンが残っている家には抵当権が設定されているため、金融機関の承諾を得ずに名義を勝手に変えることはできません。
3-1-1.住宅ローンの名義と支払い義務の関係
住宅ローンの契約形態と支払い義務との関係は、次の表のとおりです。
住宅ローンの契約形態 | 離婚後の支払い義務 |
---|---|
夫単独名義 | 夫が支払い義務を負う |
妻単独名義 | 妻が支払い義務を負う |
夫婦共同名義(連帯債務) | 夫婦両方に支払い義務がある |
夫が主債務者+妻が連帯保証人 | 夫が支払えない場合、妻に支払い義務が発生 |
ペアローン | 夫婦両方に支払い義務があり、片側が支払えない場合、もう一方に支払い義務が発生 |
夫婦でペアローンを組んでいる場合は、夫婦それぞれの契約分の支払い義務があると同時に、お互いが連帯保証人になっているため、どちらかが返済を滞らせると、もう一方が支払うことになります。
3-1-2.片方が住宅ローンを引き継ぐ場合
住宅ローンをどちらかが引き継いで住み続ける場合、銀行の審査が必要です。
おもな条件として、次のようなものがあります。
-
引き継ぐ側の収入が十分にあること
- 住宅ローンを単独で支払い続けられるか?
- 安定した収入源(会社員、公務員など)があるか?
-
銀行の審査を通過すること
- ローン契約者を変更するには銀行の承認が必要
- 新たな契約者の信用情報や収入条件を満たす必要がある
-
親の了承が必要なケースもある
- 家が親の土地の上に建っているため、親がそのまま住み続けることを認めるかどうかも大きなポイント
3-2.オーバーローン(ローン残高>売却額)の場合
住宅ローンの残高が家の売却価格を上回る「オーバーローン」状態になっている場合、単純に家を売っても借金が残ってしまいます。
このような場合には、次のような選択肢を検討する必要があります。
3-2-1.売却しても住宅ローンを完済できない場合の解決策
1. 自己資金で補填する
- 売却後に残る住宅ローンの不足分を自己資金で補填する
- 自己資金がない場合は、ほかから借り入れて返済するという手もある
2. 親族からの資金援助を受ける
- 親が土地を持っている場合、親から資金援助を受けて完済するケースもある
3. 金融機関と交渉する
- 銀行と相談し、ローンの一部減免や支払い方法の変更が可能か確認する
- リスケジュール(返済期間の延長)を依頼することで、月々の支払いを減らせる場合がある
オーバーローンの家を売却する方法については、「オーバーローンの家やマンションは売却できる!調べる方法と5つの対処法を解説」で説明しているので、参考にしてみてください。
3-2-2.任意売却という選択肢もある
オーバーローンの状態で家を売却したい場合、「任意売却」という方法を取ることもできます。
任意売却とは、 金融機関の許可を得てローンが残った状態で抵当権を外してもらうことにより、家を売却できるようにする方法です。
売却額が住宅ローンの残額より安くても売却できるだけでなく、競売よりも高値で売却できる可能性があります。
しかし、任意売却をするには住宅ローンの滞納が必要となるため、ブラックリストに載るなど、信用情報に影響を与えてしまいます。また、当然ですが、土地の所有者である親の了承も必要です。
任意売却については、「任意売却とは?メリットとデメリットやリスク、注意点をわかりやすく解説!」で説明しているので、ぜひ読んでみてください。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 親名義の土地に子夫婦が家を建てた場合、親子間で「使用貸借契約」が成立しているケースが多い
- 親の土地に建てた家があって離婚をする場合、次の項目がどのようになっているかをまず確認する
・土地の名義
・家の名義
・住宅ローンの残り - 離婚の財産分与で親名義の土地に建てた家を分ける4つの方法は次のとおり
1.親の実子が住み続ける
2.嫁や婿が住み続ける
3.家のみを売却する
4.家と土地を売却する - 親の土地に建てた家に残っている住宅ローンは、基本的にローンの契約者が返済義務を負い続けることになる
- 住宅ローンの名義や抵当権が設定されている家の名義を変更するには、金融機関の審査と承諾が必要となる
- オーバーローンの状態で売却したい場合は、自己資金や親やほかからの借り入れで足りない分を補填することになる
- オーバーローンの家を売却したくても、自己資金がなくほかからの借り入れもできない場合は、任意売却という選択肢もある。しかし、ブラックリストに載るなどのデメリットが大きいため慎重な検討が必要
親名義の土地に夫婦の家を建てると、離婚時に多くの問題が発生します。
どちらが家に住み続けるのか、家や土地を売却して清算するのか、当事者全員でよく話し合い、全員が納得できる方法を探しましょう。
特に、親名義の土地に建てた家に住宅ローンが残っている場合は、土地や家だけでなく、住宅ローンの残りについてもどうするかを決めなければなりません。
離婚した際の家の扱いについては、「離婚したら家はどうする?分ける方法、もらう方法についてまとめた」でもくわしく説明しているので、併せてご覧ください。
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