ここでは、病死や老衰などがあった家やマンションが事故物件になるのかどうか、また自然死があった場合の売却額はどれくらいになるのかについて、わかりやすく説明します。
結論から述べると、事件性がなく人が亡くなった家やマンションは、原則として事故物件にはなりません。しかし、状況によっては事故物件になることもあるため、自己判断は禁物です。
- 病死や老衰などの自然死があった家やマンションは、原則として事故物件にはならない
- 自然死であっても亡くなってから発見までに日数が経っていると事故物件になることがある
- 自然死の放置により事故物件になった場合、売却額が相場価格より1割程度安くなってしまう
- この記事はこんな人におすすめ!
- 老衰や病死などがあった家は事故物件になるのか知りたい人
- 自然死のあった家がどれくらいの価格で売れるのかわからない人
- 自然死のあった家をすぐに売りたい人
1.病死や老衰などの自然死があった家は事故物件になる?
病死や老衰といった自然死で亡くなった人がいる家やマンションが、事故物件になるのかどうかについて説明します。
1-1.自然死のほとんどは事故物件にならない
不動産における事故物件とは、自殺や他殺といった告知義務のある不自然な人の死が起きた家やマンションなどを指します。
告知義務とは、売主が売却しようとしている物件に何らかの不具合や問題があった場合は、買主に伝えなければならないという売主の責任のことです。
病死や老衰は自然死であり、不自然な死に該当しないため、原則として告知義務の対象にはなりません。
これまで、明確な人の死における事故物件の定義はなかったのですが、国土交通省はトラブルの未然防止の観点から、2021年に宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドラインを公示しました。
このガイドラインによると、自殺や殺人といった不自然な死などについては告知義務があるとし、病死や老衰、すぐに発見された孤独死などについては告知義務がないとされています。
つまり、自殺や他殺、不審死があった場合は、売主は買主にそのことを必ず伝えなければならず、病死や日常生活の事故死などの場合は伝える義務はないということです。
しかし、自然死であっても、亡くなってから発見までに時間が経っていたような場合は、事故物件になる可能性が高くなります。
事故物件の売却については「事故物件は売却できる?相場や売却方法をわかりやすく説明する」でもくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
1-2.心理的瑕疵になるかどうかが事故物件のポイント
事故物件になるかどうかは、自殺や他殺などの不自然な人の死といった心理的瑕疵(しんりてきかし)になるかどうかがポイントになります。
心理的瑕疵とは「人を嫌な気持ちにさせるような欠陥や欠点」という意味です。
しかし、人によって心理的瑕疵の捉え方は異なります。「事件や事故が起きた物件なんて住みたくない!」という人もいれば、「安くなるなら別にかまわないよ」という人もいるでしょう。
このように、人の感じ方で判断するとトラブルが発生するため、法律で告知義務事項として定められているのです。
2.売買で自然死が告知義務だと判断されるケース
売却する家やマンションで病死や老衰死などの自然死があったとしても、原則として告知義務事項にはなりません。
しかし、状況によっては事故物件だと判断されるケースもあります。
2-1.発見が遅れた「自然死」は告知義務の対象になる
「事故や事件性のない死」とはいえ、死亡から発見まで一定期間以上経った自然死は「孤独死」として扱われ、事故物件と判断される可能性が高くなります。
しかし、亡くなってから何日以内に発見されれば告知義務は不要、といった明確な基準はありません。
一般的には、室内においや汚れが染み付いてたり、警察や救急車がきて近所に孤独死の事実が知れていたりする場合は、告知義務の対象になってしまいます。
そのような状況でなくても、少なくとも不動産会社には人の死があった事実を伝えておくことが大切です。
買主に告知すべきかどうかは、売却を依頼する不動産会社に判断してもらいましょう。
2-2.「突然死」は発見までの期間による
突然死には、次のようなケースがあります。
- 浴室での心筋梗塞
- 乳幼児突然死症候群
- 原因不明の急な死亡
このような「突然死」には事件性がないため、発見が遅れさえしなければ事故物件に該当する可能性は低いです。
人はいずれ死を迎えるものですから、物件内のすべての死が告知義務に該当するわけではありません。
ただし、自然死の場合と同様に、亡くなってから発見までに日数が経っているような場合は、事故物件として扱われることがあります。
3.自然死のあった家やマンションはいくらで売れる?
自然死のあった家やマンションは、事故物件になるかどうかで売却できる額は変わってきます。
3-1.事故物件になったら相場よりも売却額が安くなる
病死や突然死で亡くなってからすぐに発見された場合は、事故物件にならないため、通常の相場価格に近い額で売却することが可能です。
しかし、亡くなってから発見されるまでにかなり時間が経っている場合は、事故物件になってしまうため、相場よりも安い額での売却になります。
どのような状況であったかにもよりますが、自然死の放置によって事故物件になった場合、仲介で売却した場合の額と同じぐらいか、そこから1割程度安くなることが多いと考えておきましょう。
つまり、仲介で売却した場合、相場価格が1,800万円の物件であれば、1,800万円〜1,620万円程度の売却額になるということです。
また、においや汚れが染みついた家やマンションの場合だと、ハウスクリーニングやリフォームをするための費用が必要になることも考えられます。その費用分も含めて、手取り額を計算しなければなりません。
事故物件のリフォーム費用については「事故物件のリフォーム費用はいくらかかる?売却でもリフォームは必要?」で詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
3-2.すぐに売りたいなら「買取」での売却がおすすめ
一般的な仲介での売却だと、早くても売却するまでに3ヵ月以上かかってしまいます。自然死のあった家やマンションをすぐに売却した場合は、不動産会社に買い取ってもらうのも一つの方法です。
- 売却に時間をかけたくない
- できるだけ早く売ってしまいたい
このような場合は、仲介で一般の人に売るのではなく、買取の利用を検討してみましょう。
買取による売却だと、不動産会社と価格と条件の折り合いさえつけば、すぐに売却することができます。
内見の立会いといった売却時の手間や手続きも不要です。また、近所の人や知り合いに知られずに売却することができます。
ただし、買取額は仲介での売却額よりも安くなってしまう点がデメリットです。
たとえば、先ほどの相場価格1,800万円の家だと、事故物件になれば1,620万円程度になり、買取ではさらに3割ほど安い1,134万円程度になってしまいます。
家の相場価格 | 仲介で売却した場合 | 事故物件になった場合(孤独死) | 事故物件を買取で売却した場合 |
---|---|---|---|
1,800万円 | 1,800万円程度 | 1,800〜1,620万円程度 | 1,260〜1,134万円程度 |
買取については、「不動産買取とは?なぜ安くなる?相場額や注意点、おすすめの場合を解説」でくわしく説明していので、ぜひ読んでみてください。
不動産会社に連絡する前に、いくらぐらいで売れそうかを知りたいという場合は、イクラ不動産を利用すれば無料&秘密厳守で価格を調べることが可能です。
イクラ不動産では不動産会社から買取した実績(どの物件を、いつ、いくらで買取したのか)をデータとして集めています。そのため、相場価格を調べたり事故物件の買取や売却に強い不動産会社を探したりできます。
さらに、不動産の売却でわからないことがあれば、宅建士の資格を持つ専門スタッフにいつでも無料で相談することができるので、初めての売却でも安心です。〜
4.判例でみる自然死の告知義務の有無
告知義務に該当するのはどのようなケースか、裁判所の判例をみてみましょう。
4-1.腐乱遺体が見つかって売却許可決定が取り消されたケース
マンション内で死後約4ヵ月の死体が発見されたことにより、競売の売却決定許可が取り消しになった事例です。
概要 | 競売されたマンション内で死亡後4ヵ月の腐乱遺体が発見される。民事執行法第75条1項の「損傷」に該当するとして、売却許可決定が取り消された。 |
判例 | 死因は不明なものの、異臭が染み付くなどの物理的損傷とともに、遺体が長期にわって放置された事実は、民事執行法第75条1項の損傷に該当する。 |
(平成22年1月29日名古屋高裁:不動産適正取引推進機構)
4-2.過去の失火による死亡事故で売主の損害賠償責任が認められたケース
過去の失火による死亡事故は心理的瑕疵であるという買主の主張が認められ、売主の損害賠償責任が認められたケースです。
概要 | 3年7ヵ月前の失火による死亡事故は心理的瑕疵であるとして、売主の損害賠償責任を認めた。 |
判例 | ・不慮の事故は自然死とは異なると理解され、心理的瑕疵に該当する。 ・仲介業者に非はないものと判断。 ・損害賠償請求1,876万円のところ200万円を認める。 |
(平成22年3月8日東京地裁:不動産適正取引推進機構)
4-3.死亡後4日の発見は「自然死」と判断されたケース
こちらの判例は賃貸借契約にともなう事案ですが、自然死の告知義務の有無において参考になるので掲載します。
概要 | 賃借人の従業員が建物内で病死4日後に発見。賃貸人は建物の価値下落を負ったとして損害賠償請求をしたが、賃借人の債務不履行などは認められず損害賠償請求を棄却。 |
判例 | ・老衰や病気等による自然死は、当然に予想される。 ・死後4日の発見は債務不履行や不法行為責任に該当しないため、賃借人に責任を問うことはできない。 |
(平成19年3月9日東京地裁:不動産適正取引推進機構)
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まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 病死や老衰など、事件性のない自然死があった家やマンションは、原則として告知義務のある事故物件にはならない
- 自然死であっても亡くなってから発見までに日数が経っていると孤独死と判断され、事故物件になる場合がある
- 自然死の放置により事故物件になってしまった場合、売却額が相場価格より1割程度安くなってしまう
- 売却を急ぐ場合は、買取もおすすめ。ただし、仲介での売却額より3割程度安くなってしまう
原則として、事件性のない自然死については売買時の告知義務に該当しません。
しかし、自然死であっても状況によっては事故物件になることもあります。自然死があったことを買主に告知すべきかどうかは、自身で判断せず、不動産会社に必ず相談しましょう。
また売却に時間をかけることができない場合やすぐに売ってしまいたい場合は、仲介での売却よりも安くなってしまいますが、不動産会社に買取してもらうのも一つの手です。
あらかじめいくらぐらいで売れるのかを「イクラ不動産」で調べておけば、買取してもらう不動産会社選びの際に役立ちます。
自然死があった家を売却したいけれど、どこの不動産会社に相談すればよいかわからないとお悩みの場合は、ぜひイクラ不動産ご利用ください。
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