共有名義の家やマンションなどを持っていて離婚する場合、財産分与の手続きが複雑になることがあります。
離婚後も家やマンションを共有名義のままにしておくと、さまざまなトラブルになる可能性が高いため注意が必要です。
こちらでは、離婚をする時に夫婦共有名義の家をどうすれば良いかについて、わかりやすく説明します。
- 離婚で家を分ける時は、家の名義や共有持分割合にかかわらず、原則として夫婦で半分ずつになる
- 家を共有名義のままにしておくと、売りたい時や相続発生時にトラブルになりやすいので避ける
- 共有名義の家に住宅ローンが残っているかどうかで対処法が変わる
- この記事はこんな人におすすめ!
- 離婚時に共有名義の家やマンションがある場合、どうすれば良いのかを知りたい人
- 家を共有名義にしたまま離婚するリスクについて知りたい人
- 住宅ローンが残っている共有名義の家をどう分ければ良いかを知りたい人
1.離婚で家を分けるとき、名義や持分割合は無関係
夫婦で家やマンションを購入するとき、夫婦の共有名義にするケースがよくあります。
まず、家の持分割合と、割合の決め方について説明します。
1-1.家の「持分割合」とは?持分割合の決め方
持分割合(もちぶんわりあい)とは、その不動産を所有している割合のことです。不動産(マンション・一戸建て・土地)を夫婦で共有名義にするときには、それぞれの「持分割合」を決めなければなりません。
夫婦で家を共有する場合、2人の持分を足すと1(100%)となるように分けます。
一般的に、持分割合は、それぞれが出したお金の金額で決めることが多いです。
たとえば、2,000万円の家を購入する際に、妻が頭金として200万円を出し、残りの1800万円を夫の単独名義でローンを組んだ場合、持分割合は次のようになります。
【夫婦の持分割合(2,000万円の家の場合)】
家の代金 | 家の持分割合 | |
---|---|---|
妻が出した額 | 200万円 | 10分の1(10%) |
夫が出した額 | 1,800万円 | 10分の9(90%) |
合計 | 2,000万円 | 1(100%) |
1-2.離婚時の財産分与では、基本的に2分の1(半分)ずつ
離婚で共有名義の家を分ける場合、「持分割合がそれぞれが得られる財産分になる」と思われているケースがよくありますが、これは誤解です。
確かに、一般的に共有持分の不動産を分けるときは、持分割合に従って財産を分けます。
しかし、離婚の際には、持分割合とは無関係に家を分けます。家は「財産分与」の対象になるからです。
財産分与(ざいさんぶんよ)とは?
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を、離婚時に夫婦それぞれ分け合うことをいいます。不動産は、財産分与の対象に含まれます。
一般的に、夫婦の財産形成に対する貢献度は同程度であると考えられており、財産分与をするときには、夫婦が2分の1ずつにするのが原則です。
家を分けるときも同様で、夫婦の共有持分割合がどのようになっていても、分けるときには2分の1ずつになります。
2.離婚後に家が共有名義のままだとトラブルになりやすい
共有名義の家がある場合、離婚時は夫婦の共有持分を2分の1ずつにして、離婚後も共有状態のままにしておくことは可能です。
しかし、将来トラブルになるリスクが高いため、一般的にはこのような方法を選びません。
どのようなトラブルになる可能性があるのかを確認しておきましょう。
2-1.相手の同意がないと売却や活用ができない
離婚後も不動産が共有状態になっていると、将来、家を貸したり売ったりする場合も建物の増改築や不動産を担保に入れてお金を借りたい場合なども相手の承諾が必ず必要となるため、自由にできずとても不便です。
お互いの意見が合わない場合は、当然トラブルのもとになります。また、離婚したあとも相手との関係が続いてしまうため、嫌だと考えている方が多いです。
2-2.相続になるとさらに関係が複雑になる
離婚したあと、元夫もしくは元妻が亡くなってしまった場合、家の共有持分は亡くなった側の遺族が相続することとなります。
たとえば、亡くなった夫が再婚しており、新しい配偶者と子供が1人いた場合、元夫が持っていた共有持分をこの2人が相続します。
そのため、元妻は、相続した2人の同意がなければ家の売却や活用ができないという、さらに複雑な関係になってしまうのです。
2-3.共有分割調停や共有持分訴訟になる可能性もある
共有分割調停とは、話し合いによって協議が整わなかった場合、裁判所の調停委員に間に入ってもらって、話し合いを仲介してもらう手続きのことです。
相手と連絡を取ったり直接顔を合わせたりする必要もありませんし、調停委員から客観的な和解案を提案してくれるので、合意できる可能性が高くなります。
共有分割調停でも、相手と合意ができなければ「共有物分割訴訟」という裁判によって解決するしかありません。共有物分割訴訟とは、裁判所に対して「共有物を分割してください」と求める裁判のことです。
共有物分割訴訟になると、
- 共有不動産自体を切り分ける「現物分割」
- 他の共有者の持分をお金(代償金)を払って買い取る「価格賠償」
- 不動産を強制的に売却(競売)し、お金を分ける「換価分割」
いずれか3通りの分割方法となります。
①と②ができない場合、裁判所は③「換価分割」の決定をするしかありません。売却を望んでいなかったとしても、判決で換価分割を宣言されてしまうケースもあるのです。
さらに詳しく知りたい方は「離婚後、元夫や元妻と家が共有状態の場合における解消方法」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
3.家を共有名義から単独名義にする方法
共有名義の家は、離婚の際にどちらかが相手に自分の共有持分を全部譲り、単独名義にしてしまうのがおすすめです。
そのためには、どちらかの共有持分を相手に「財産分与」することによって対応します。
住宅ローンの有無で方法が異なるため、それぞれの場合で確認しましょう。
3-1.住宅ローンがない場合
住宅ローンがない(残っていない)場合には、共有持分を財産分与するのは簡単です。
離婚協議書(協議離婚合意書)や財産分与契約書を作成して、財産分与にもとづいて、共有名義から夫婦どちらかの単独名義へ不動産登記(所有権移転登記の申請)をすれば良いだけだからです。
この場合、家の名義を譲ってもらった側は、相手に対し家の価値の半額分の「代償金(だいしょうきん)」を支払うことで公平に財産分与することができます。
ただし、夫婦の合意があれば、代償金なしで相手に家を全て分与(ぶんよ:分け与えること)することも可能です。
名義変更の手順やかかる税金について詳しくは「離婚後、家の名義を夫から妻に変更できる?住宅ローンとの関係を徹底解説!」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
3-2.住宅ローンがある場合
一方、住宅ローンが残っている場合には、そう簡単にはいきません。
住宅ローンを利用している場合、借入先の金融機関の了承を取らないで、家をどちらか一方の単独名義に変更してしまうと、住宅ローンの契約違反になる恐れがあるからです。
違反すると、残っている住宅ローンの一括払いを求められる可能性もあります。
たとえば、夫婦でローンを組んでいて家が共有名義になっており、夫が妻に家を分与したいとしても、夫名義の住宅ローンを完済してからでないと、妻に名義変更できません。
住宅ローンを完済するためには、どこかからお金を工面して支払う必要があります。
この場合に取れる方法は、次の2つです。
- 貯蓄や借り入れで足りない額を補填してローンを完済する
- ローン借り換えをして相手名義のローンを完済し、住宅ローン全額を自分名義にする
このような方法をとれば、現時点で住宅ローンが残っていても夫のローンを完済することができるので、家の名義も妻に変更することができます。
住宅ローンを完済する方法は、「オーバーローンの家やマンションは売却できない?調べる方法と5つの対処法を解説」で詳しく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
離婚で家の名義を変更する方法については「離婚後も妻が夫名義の持ち家に安心して住むには?住宅ローンの有無別に紹介」で説明しています。
また、連帯保証人や連帯債務の関係となっている場合は、代わりとなる別の誰かもしくは人でなくても土地や建物などの物的担保(ぶってきたんぽ)を入れることにより外してもらう方法があります。
ただし、これらの方法ができない場合には、ローンを完済するまでは、共有名義のままで我慢するしかありません。
4.離婚時に共有名義の家を売却するのもおすすめ
夫婦共有名義の家を離婚時に単独名義にしようとすると、どちらの名義にするのか、代償金をいくらにするのか、住宅ローンはどうするのかなどいろいろと困難な問題が発生します。
このようなときには、家を売却することで夫婦共有名義の問題をすっきり解消することができます。
4-1.離婚で共有名義の家を売るタイミング
離婚で家を売る場合は、夫婦間で相談や連絡をしやすい離婚前が良いでしょう。これは、共有名義の家でも同じです。
離婚して別々に暮らすと、なかなか連絡が取れない、スケジュールが合わないなどで、売却活動がしにくくなります。
ただし、家を売ったお金を財産分与として分けるのは離婚後です。たとえば、家の名義人でもなく持分割合もない妻が、離婚前に家の売却代金を夫から受け取ると、贈与税が課せられる場合があります。
4-2.アンダーローンの場合は売却代金を分け合える
共有名義ならば、夫婦が共同で住宅を売却しなければなりません。
アンダーローンとは、残っている住宅ローンの残債(残高)が家の売却価格を下回っている状態のことです。
この場合、家が売れたらその売却代金をまずは住宅ローンの支払いに充て、残ったお金は夫婦で分け合うことができます。このように売却することで住宅ローンを完済できれば、離婚後に面倒な家の問題を持ち越さずに済みます。
4-3.オーバーローンの場合はローンを大幅に減らせる
反対に、オーバーローンとは、残っている住宅ローンの残債(残高)が家の売却価格を上回っている状態のことです。
この場合、そもそも財産分与の対象ではなくなってしまいますが、売却してしまうことで共有名義となっている関係からは解消されます。
また、売却後に残った住宅ローンを支払っていくのは、ローン名義人になりますので、住宅ローンがどちらかの単独名義になっている場合、夫婦で約束をしない限り、ローン名義人でない方は、今後も残った住宅ローンの支払いをする必要はありません。
仮に、自分が連帯保証人や連帯債務者になっていた場合でも、家を売却して住宅ローンの残債を減らしておくことで、将来、主債務者(メインで借りている人)が返済できなくなった際に自分にのしかかってくるローンの残債を少しでも減らしておくことができます。
家の売却については「離婚が原因で家を売却する時の5つのポイント」も併せてご覧ください。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 持分割合とは、その不動産を所有している割合のことで、一般的には家やマンションを購入した際に、夫婦それぞれが出したお金の割合で決まることが多い
- 離婚で家を分ける時は、名義や共有持分も割合にかかわらず、原則として夫婦で半分づつになる
- 家を共有名義のままにしておくと、家を売りたい時や相続が発生した時にトラブルになりやすいので、共有名義を解消しておくようにする
- 共有名義の家に住宅ローンが残っているかどうかで対処法が変わる
- 住宅ローンが残っていない場合は、家の名義をどちらかの単独名義にして、財産分与の額や代償金の支払いなどで調整する
- 住宅ローンが残っている家は、売却額でローンが完済できない場合は負の財産となるため、財産分与の対象とならない
- 共有名義の家を売って、売却代金を財産分与するとい方法もある
- 離婚で家を売る場合は、連絡しやすい離婚前がおすすめ。ただし、財産分与で売却代金を分けるのは離婚後にする
離婚の際に夫婦共有名義の家がある場合は、離婚後のトラブル回避のためにもどちらかの単独名義にするか、売却した代金を財産分与するのがおすすめです。
離婚で家を売るかどうか決まっていなくても、いくらぐらいで売れるのかというのは「財産分与」の観点からも必ず知っておく必要があります。
とはいえ、売るかどうか決まっていないのに「不動産会社に査定してもらう」ということにハードルを高く感じる人は少なくありません。
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イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
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