不動産を売るとき、今の価値がいくらぐらいなのか知るために、不動産会社に査定してもらいます。
査定額を出す方法は大きく分けると3つありますが、一戸建ての建物部分を査定する際に用いるのは「原価法」という方法です。
ここでは、原価法についてわかりやすく説明します。
具体的にわかるのは、次のようなことです。
【この記事で具体的にわかること】
- 原価法とはどのような査定方法なのか
- 戸建ての査定方法について
- リフォームの査定方法について
戸建ての売却を考えており、どのように査定されるかを知りたい場合は、ぜひ一読して参考にしてください。
- この記事はこんな人におすすめ!
- 戸建ての売却を考えている人
- 戸建ての査定方法を知りたい人
- リフォームをしている戸建ての査定方法を知りたい人
1.原価法とは一戸建ての建物部分の評価方法
居住用不動産で、一戸建て(一軒家・中古住宅)の建物部分を査定するときに利用されるのが原価法です。
原価法は、次の計算式で求めることができます。
原価法を計算するポイントは、再調達価格と減価修正(残耐用年数/耐用年数)の2つです。
今、すでに建っている建物を取り壊したと仮定して、同じ建物をもう一度建てたときにいくら費用がかかるのかを計算(これを再調達価格という)し、その価格から、建物の設備が老朽化している分だけ差し引く(これを減価修正という)ことで、査定価格を出します。
1-1.再調達価格
再調達価格(さいちょうたつかかく)とは、今すでに建っている建物を取り壊したと仮定して、同じ建物をもう一度建てたときにいくら費用がかかるのかを計算することです。
建物の構造や部材によって、新築時の単価は決められています(銀行など金融機関や不動産会社によって多少異なります)。
標準的 | やや高単価 | 高単価 | |
木造 | 14.8万円/㎡ | 17.4万円/㎡ | 20.9万円/㎡ |
軽量鉄骨造 | 14.8万円/㎡ | 17.4万円/㎡ | 20.9万円/㎡ |
(重量)鉄骨造 | 15.6万円/㎡ | 18.3万円/㎡ | 22.0万円/㎡ |
RC(鉄筋コンクリート)造 | 18.8万円/㎡ | 20.9万円/㎡ | 25.1万円/㎡ |
SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造 | 18.8万円/㎡ | 20.9万円/㎡ | 25.1万円/㎡ |
例えば、延床面積100㎡の木造の家を、新築でもう一度建てたと仮定した再調達価格は、14.8万円×100㎡で1,480万円となります。
1-2.減価修正
減価修正(げんかしゅうせい)とは、建物の設備が老朽化した分の計算です。
減価修正は、残耐用年数(耐用年数−築年数)÷耐用年数で計算することができます。
ここでの耐用年数とは法定耐用年数のことを指しています。建物の構造や事業用か非事業用(居住用)かによって、法定耐用年数が決められています。
構造 | 耐用年数(事業用) | 耐用年数(非事業用) |
木造 | 22年 | 33年 |
軽量鉄骨(3mm以下) | 19年 | 28年 |
重量鉄骨 | 34年 | 51年 |
RC(鉄筋コンクリート)・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート) | 47年 | 70年 |
これで原価法で計算ができるはずです。
例えば、延床面積100㎡の築11年の木造の家の建物部分は、15万円×100㎡×(33−11年)÷33年で1,000万円となります。
もし、築年数が耐用年数を超えている場合は価値が0円とみなされてしまいます。
このことについて、もう少し詳しく説明しましょう。
耐用年数には、法定耐用年数と経済的耐用年数の2種類があります。法定耐用年数は税務上、減価償却を計算する際に定められている耐用年数です。
減価償却
減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少していく固定資産を取得した際に、購入費用をその耐用年数に応じて計上していく会計上の処理のことをいいます。
固定資産というのは不動産でいうと建物部分に該当します。例えば、家を新築で購入して、20年後も新築と同じ価値というのは無理があります。その20年の間に、家の劣化が進み、キッチンや風呂などの設備も老朽化しているからです。
つまり、減価償却とは、時間が経過すると価値が下がる資産の価値を、正しく評価するために行なう作業といえます。不動産の土地部分のように、時間の経過や使用により価値が減少しないものは、減価償却資産には含まれません。
減価償却の目的は、不動産の取得のために掛かった費用を、最初に支払い時に全て一回きりの費用とするのではなく、収益を得るために利用した期間に応じて経費として計上することが、企業会計にとって望ましいために使うとされています。
付け加えると、そもそも税金は、収入から経費を引いて残ったお金にかけられます。経費の方が大きくなると赤字になり、税金を払う必要がありません。そこで、節税の方法のひとつとして、経費をできるだけ多く計上しようという考えになります。できるだけ収入に近い経費になると黒字額が少なくなり、税金が少なくて済むからです。
減価償却費は、数字上で価値が減っているだけなので、実際に支出した費用ではありませんが、経費として計上することができます。
このように、建物を減価償却することによって費用として計上できます。しかし、費用(コスト)として考えるのは、その不動産が将来どれぐらいの稼ぎ出せるのか、収益力に基づいた投資用不動産の価格を求める方法であれば良いのですが、自分が住むための居住用不動産には、稼ぐ力が求められませんので、ほとんど関係のない話です。
これに対して、経済的耐用年数とは、実際に建物が十分に使用できる年数のことです。一戸建ては、立地や建築方法などによって、利用できる年数がそれぞれ異なるのにも関わらず、今まで耐用年数は法定耐用年数を利用してきました。
でも、これっておかしいですよね。そのため、国が制度の変更に動きはじめています。
家屋の評価額が0円になることはない
お家を所有していると固定資産税がかかります。お家は土地と家屋とにわけられますが、木造の法定耐用年数が22年ということは、木造の家屋は22年を超えると固定資産税がかからないと思うかもしれません。また、建築年数が相当古いと、価値(固定資産税評価額)がもうないとみなされそうな気がします。
しかし、家屋の固定資産税評価額は、家屋がある限り0円になることはありません。家屋が古くなった家屋が古くなった分を減価させる割合(経年減点補正率)は、最終的には2割になり、それ以上下がりません。
これは、通常の家屋であれば、家屋の使用に支障のないように必要最低限の修繕などの維持管理が行われていると考えられるからです。
2.一戸建ての土地部分の査定は取引事例比較法
一戸建ての土地部分を査定するときは、取引事例比較法を利用して求めることが一般的です。
取引事例比較法とは、査定したい物件と似ている物件が、過去に取引されて成約した事例を参考に査定額を算出する査定方法です。
新しく土地を作った場合、例えば農地や林地を宅地に(造成)した場合は、近隣の取引事例を確認し、その事例をもとに造成工事費や附帯工事費などを計上して、土地の再調達価格を計算することができますが、すでにある宅地(既成市街地)は、再調達価格の把握が困難なために不向きです。
よって、一戸建ての土地部分は取引事例比較法を利用して価格を求めます。
土地の査定方法について詳しくは「土地の査定方法である「取引事例比較法」をわかりやすく解説!」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
建物部分は上で説明した通り原価法で計算しますが、原価法で求めた建物の価格と取引事例比較法で求めた土地の価格を合わせた価格(積算価格といいます)が一戸建ての査定価格になります。
原価法を計算する際にポイントとなるのは、再調達価格(同じ建物をもう一度建てたときにいくらかかるのか)と減価修正(建物の設備が老朽化している分だけ差し引く)の2つでしたが、いきなり自分で計算するには簡単ではありません。
自分の家がいくらなのか、査定価格が知りたい方は「イクラ不動産」で無料で知ることができるので、お気軽ご利用ください。
査定額に影響する点について詳しくは「中古戸建を査定する前に知っておくべきことについてまとめた」をご覧ください。
3.住宅の性能やリフォームが建物の評価に反映される動き
「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」とは、不動産を所管している国土交通省が2014(平成26)年3月に策定したもので、流通市場における中古戸建住宅の「築後20年から25年程度で一律に市場価値がゼロになる」とされる取引慣行を改善し、住宅の性能やリフォームの状況などを的確に反映した評価に変更するというものです。
同時に、不動産会社が一戸建ての建物部分の査定で利用している公益財団法人不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」についても改変されました。
既存住宅価格査定マニュアルとは、不動産会社(宅地建物取引業者)が、査定を依頼した消費者に対して、納得しやすい査定価格の根拠を合理的に示す手法として作成されたツールです。
(不動産流通推進センターの価格査定マニュアルより引用)
不動産会社(宅地建物取引業者)は、このマニュアルのシステム上に物件の情報(築年数、各部位のグレード、維持管理状態など)を入力することで査定価格を算出することができます。
不動産会社がこのマニュアルを用いることで、住宅の本来の使用価値を適正に反映した評価がなされることが期待されていますが、国も制度の変更に動きはじめたところということもあり、耐用年数は法定耐用年数を利用するのが現在も一般的です。
自分の家がいくらなのか、査定価格が知りたい方は「イクラ不動産」で無料で知ることができます。お気軽ご利用ください。
※こちらの記事は、価格査定マニュアルに関して(公財)不動産流通推進センターの掲載許可を受けています。価格査定マニュアルは、無断使用(複製、改ざん、頒布などを含む。)を固く禁じられております。