不動産を売るとき、今の価値がいくらぐらいなのか知るために、不動産会社に査定してもらわなければなりません。
ここでは、収益物件を査定する際に用いる「収益還元法」についてわかりやすく説明します。
具体的にわかるのは、次のようなことです。
- 収益還元法とはどのような査定方法なのか
- 投資物件(収益物件)の具体的な査定方法について
マンションの売却を考えており、どのように査定されるかを知りたい場合は、ぜひ一読して参考にしてください。
- この記事はこんな人におすすめ!
- 投資用物件(収益物件)の売却を考えている人
- 収益物件の具体的な査定方法を知りたい人
1.収益還元法(しゅうえきかんげんほう)とは
収益還元法とは、その不動産が将来どれぐらい稼ぎ出せるのか、収益力に基づいて不動産の価格を求める方法です。その物件(不動産)の収益力が高ければ査定価格(物件としての価値)も高くなり、収益力が低ければ査定価格も安くなります。
自分が住むための物件である居住用不動産には、稼ぐ力が求められませんので、この方法はアパートや賃貸マンションなど投資用不動産(収益物件)を査定するときに利用されるのが一般的です。
不動産価格を求める方法は、収益還元法のほかにも次のような方法があります。
取引事例比較法
取引事例比較法とは、売却する不動産と条件が近い不動産(同じマンションならより良い)の過去の成約事例をいくつか選んで平均坪(㎡)単価を算出します。算出された単価に、売却する不動産の広さを掛けます。その金額をベースに、間取り・方角・現状・角部屋などの要因や経済状況を考慮の上、査定価格を出す方法です。居住用不動産のマンションや土地の査定方法として多く利用されます。
原価法
原価法とは、今すでに建っている建物を取り壊したと仮定して、同じ建物をもう一度建てたときにいくら費用がかかるのかを計算(これを再調達価格という)し、その価格から、建物の設備が老朽化している分だけ差し引く(これを減価修正という)ことで、査定価格を出す方法です。居住用不動産の一戸建ての建物部分の査定方法として多く利用されています。
収益還元法の具体的な計算方法として、「直接還元法」と「DCF法」の2つがあります。
それぞれについて見ていきましょう。
1-1.直接還元法(ちょくせつかんげんほう)
直接還元法とは、不動産が生み出した1年間の収益を、その不動産から得られることが妥当な還元利回り(投資の利回り)で割り戻して不動産の価値を求める方法です。
例えば、毎月10万円の賃料が入る1,000万円のマンションを購入したとします。この場合、10万円×12ヶ月で生み出す1年間の収益は120万円ですから、利回りは12%になりますが、この利回りのことを表面利回りといいます。
表面利回りが収益を示す指標ではありません。厳密にいうと、年間家賃収入からかかった費用を差し引いて求めなければなりません。
賃貸経営のためには、固定資産税や管理会社に支払う管理費用や修繕費、火災保険料、銀行の金利などさまざまな費用がかかりますので、これらを引いたものが実際の収益(純利益)になります。
直接還元法は、純利益と還元利回りから不動産価格を出す方法になります。
還元利回りは、周辺地域の類似した物件の利回りを参考にして求めるのが一般的で、直接還元法においては、還元利回りの設定が最も重要なポイントになります。
しかし、還元利回りを正確に出すことは難しいため、還元利回りの代わりに想定利回りを使用して参考の査定価格を出すことが多いです。
例えば、大阪市北区の想定利回りが6.4%とします。
そして、年間家賃収入120万円の物件であれば、120万円÷6.4×100となるため、査定価格は1,875万円になります。
もし、経費で20万円かかるのであれば純利益は100万円になるため、100万円÷6.4×100で、査定価格は1,562万円です。
1-2.DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
「DCF」とは「Discounted Cash Flow」の略で、将来得られる収益と売却価格から現在の価値に割引き、それらを合計して不動産の価値を求める方法です。
簡単に説明すると、最初に「◯年後に◯◯万円で売却する」と決めて、それまでに得られる収益の価値を計算し直して価格を出す方法になります。DCF法は計算が複雑な分、直接還元法より精度の高い評価が可能です。
例えば、毎月10万円の賃料が入れば年間120万円になりますが、今受け取れる120万円と1年後に受け取れる120万円というのは、厳密にいうと同じ価値ではありません。
もし、銀行に預けていればその分の利息が受け取れます。まして、10年後に物価が上昇(インフレーション)していれば、もらえる120万円の価値が現在と同じ価値でないことは明白です。
このように、不動産は所有する期間が長ければ長いほど、様々なリスクにさらされることになりますので、不確実な将来よりは今の120万円という価値の方が高いというのが、DCF法の基本的な考え方です。
将来受け取れる金額を、現在受け取れるとしたらいくらの価値が有るのかを割り引いて(ディスカウント)1つ1つ計算します。現在価値に割り引いた後の金額を割引現在価値といい、価値を割引く際の利率のことを割引率といいます。
年間割引率をAとして、B年後のC円の現在価値(割引現在価値)は、次のように求めます。(※ただしインフレ率を0%とします。)
例えば、毎月10万円の賃料が入る物件を、10年後に1,000万円で売るとしましょう。賃料は合計120万円×10年間で1,200万円が手に入ります。合計するとこの物件の価値は2,200万円ということになります。
仮に、銀行に預金すると年1%の利子がつくとして、1年後の割引現在価値は120万円÷(1+0.01)で118万8,118円になります。10年後には1,136万円5,550円ということなります。
受取時期 | 受取金額 | 割引現在価値 |
1年後 | 1,200,000円 | 1,188,118円 |
2年後 | 1,200,000円 | 1,176,355円 |
3年後 | 1,200,000円 | 1,164,698円 |
4年後 | 1,200,000円 | 1,153,176円 |
5年後 | 1,200,000円 | 1,141,758円 |
6年後 | 1,200,000円 | 1,130,454円 |
7年後 | 1,200,000円 | 1,119,261円 |
8年後 | 1,200,000円 | 1,108,179円 |
9年後 | 1,200,000円 | 1,097,207円 |
10年後 | 1,200,000円 | 1,086,344円 |
合計 | 12,000,000円 | 11,365,550円 |
10年後に1,000万円で売るので、合計した2,136万5,550円がDCF法で求めた査定価格ということになります。
「現在の120万円は、1年後に1%の利子がつけば121万2,000円に増える」と予測して投資するのが一般的な考え方です。「1年後の121万2,000円は、現在の120万円」という逆の発想で、お金には時間分の価値があるということを前提として、将来の金額を現在の金額に巻き戻して考えるのがDCF法なのです。
現在の日本のように、金利の変動が小さく低金利が続いているのであれば、それほど大きな違いが出てきません。ただし、割引率が大きくなればなるほど差が出てきます。
まとめ
収益還元法についての考え方を理解できれば、自分で投資用物件の査定価格を求めることができます。
DCF法の方がより詳細な価値を算定することができますが、計算が複雑なこともあり、金利の低い現在の日本においては、投資家の多くの方が直接還元法を利用しています。
ぜひ一度、ご自身で不動産の価値を確かめてみることをおすすめします。
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