空き家を売却する際、事前に知っておかないと損する重要な注意点やポイントがいくつかあります。それらを知らずに進めると、トラブルや損失に繋がりかねません。
本記事では、空き家の売却で悩んでいる人に向けて、空き家を売るときに必ず確認すべき注意点やポイントを分かりやすく解説します。
「後悔しない空き家の売却」のために、ぜひ最後まで読んでみてください。
この記事で具体的にわかる3つのポイント
- 空き家を売却する流れと費用がわかる
- 空き家を売却する際に知っておくべき注意点とポイントがわかる
- 空き家をそのままにしておくリスクやデメリットがわかる
- この記事はこんな人におすすめ!
- 放置している空き家をどうにかしたいと考えている人
- 空き家の売却で失敗しないための注意点を知りたい人
- 空き家をそのままにしていると何が良くないのかわからない人
1.空き家を売却する流れと費用
「空き家を売却したい」と思っても、何から手をつければ良いのかわからない人も多いでしょう。
まずは、空き家を売却する際の流れと、空き家の売却にかかる費用について説明します。
1-1.空き家を売却する流れ
空き家の売却は、通常の不動産売却とほぼ同じ流れです。
大きく分けて、次の7つの手順で進めていきます。
- ステップ.1①相場価格と不動産会社の情報収集相場価格(いくらぐらいで売れそうなのか)や 売却に強い不動産会社がどこなのか調べる
「不動産の相場価格とは?自分でネットで調べる方法をわかりやすく解説!」
「家を売るとき売買に強い不動産屋さんの正しい探し方」 - ステップ.2②査定を依頼する
- ステップ.3③媒介契約を結ぶ売却を依頼する不動産会社と媒介契約を結ぶ
「【媒介契約とは?】3つのうちどれを選ぶべきなのか解説!」 - ステップ.4④購入希望者を探す
- ステップ.5⑤売買契約を結ぶ
- ステップ.6⑥物件引渡しの準備
- ステップ.7⑦残代金の受け取りと物件の引渡し
不動産を売却する流れについては、「不動産売却の流れを徹底解説!売却にかかる平均期間と早く売るコツも紹介」で説明しているので、ぜひ読んでみてください。
1-2.空き家の売却にかかる費用や税金
空き家を売るとき、どのような費用や税金がかかるのかをあらかじめ知っておくと安心です。
1-2-1.仲介手数料
仲介手数料は、売却が成立したときに、依頼した不動産会社に支払う手数料のことです。
売買価格によって、仲介手数料の計算方法が異なります。
売買代金(税抜) | 仲介手数料の上限額 |
400万円以下の場合 | 18万円+消費税 |
400万円を超える場合 | 売買代金×3%+6万円+消費税 |
なお、こちらは宅地建物取引業法で定められている上限額です。この上限を超えない範囲で仲介手数料の額を自由に決めることができますが、上限額いっぱいに設定している不動産会社がほとんどです。
また、2024年7月から、「低廉な空家等」(物件価格が800万円以下の宅地建物)を売買した際の仲介手数料については、宅地建物取引業法で定められている上限額ではなく、30万円(税別)を上限として受領できるようになりました。
地方にある空き家などの価格が安い物件を売却する際は、売却価格にかかわらず、仲介手数料として30万円(税別)かかることを踏まえておきましょう。
国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し(令和6年7月1日以降)」
1-2-2.印紙税
印紙税は、商業取引に関する文書に対して課される税金です。
不動産売買契約書は印紙税の課税対象にあたるため、作成時に印紙税額分の収入印紙を貼って消印し、納税する必要があります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
100万円を超え〜500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え〜1,000万円以下のもの | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円を超え〜5,000万円以下のもの | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円を超え〜1億円以下のもの | 60,000円 | 30,000円 |
1億円を超え〜5億円以下のもの | 100,000円 | 60,000円 |
※2027年(令和9年)3月31日までに作成される契約書には軽減税率が適用されます。
(国税庁HP「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」)
売却する不動産については、売買契約書の原本ではなく、買い手側のコピーでもよければそれで問題はありません。
ただし、買い手側の売買契約書をコピーする際は、必ず印紙税分の収入印紙を貼って消印してからにしましょう。
1-2-3.登記手続き費用
登記手続きの費用とは、不動産の登記を変更する際にかかる費用のことです。
不動産売却は、登記されている所有者でなければできません。
相続した空き家であれば、売却前に必ず相続登記を行い、所有者の変更をしてから売却活動を行いましょう。
登記手続きにかかるおもな費用は、名義や住所を変更する際の登録免許税と、司法書士への報酬です。
登記手続きは自分でもできますが、知識がなければ複雑でむずかしいため、司法書士への報酬も予算に入れたうえで売却計画を立てるのがおすすめです。
また、空き家の相続登記を済ませた後に、引越しなどで名義人の住所が変わっているものの、登記上では以前の住所のままになっていることがあります。
その場合、名義変更の手続きと合わせて住所変更の手続きが必要なケースもあります。
1-2-4.譲渡所得税
売却した家が、購入した価格よりも高く売れた場合に出た利益を譲渡所得と言います。そして、その譲渡所得に課せられる税金が譲渡所得税です。
よって、売却後に利益が出なければ譲渡所得税を収める必要はありません。
この譲渡所得税は、所有期間が5年以下の場合は利益額の約4割、5年を超える場合は約2割と変動するため、所有年数を確認しておきましょう。
このほかにも、状況によっては、さらに解体費用や測量費用などがかかることがあります。
不動産の売却にかかる費用については、「家やマンションの売却にかかる費用を解説!手元に残るのは結局いくら?」で詳しく説明しています。ぜひ読んでみてください。
2.空き家を売るときの注意点とポイント
空き家を売却の流れと費用がわかったところで、次に、空き家をスムーズに、かつ、損をせずに売却するための注意点とポイントを説明します。
次の6つの注意点とポイントを押さえておきましょう。
- 空き家の所有者を確認する
- 自己判断で空き家を解体しない
- 契約不適合責任に注意する
- 3000万円の特別控除が受けられる場合がある
- 空き家の売却を依頼する不動産会社選びが重要!
- 買取の利用も検討する
それぞれについて、わかりやすく説明します。
2-1.空き家の所有者を確認する
自分が買ったマイホームを売る場合、所有者が自分であることは間違いありません。しかし、空き家を売却するときは、権利関係に注意が必要です。
空き家になった実家を売却するときに、親名義の家だと思っていたのに「名義が祖父のままだった」など、親以外が所有者だったというケースもあります。
ここでの問題点は、相続が複雑になってしまうことです。
もし所有者が自分の親なら、その相続人となるのは自分や兄弟だけですし、一人っ子のケースなら相続登記もかなりスムーズです。
しかし、祖父が所有者であるとなれば、祖父からみた相続人は基本的に子供たちですが、そのなかで亡くなっている人が入れば、その子供(祖父からみて孫)が「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」をすることになります。この場合、相続に関わるすべての人の了承を得なければ、空き家の売却ができません。
所有者が祖父や曽祖父になると相続関係者が数十人と大勢になるケースがあり、司法書士に依頼するにしても対応が異なるため、早めに所有者の確認をしておくべきです。
2-1-1.不動産の所有者を確認するには
不動産の所有者は、権利証または登記識別情報、登記事項証明書などで確認することができます。
権利証は、2005年の法改正で名称が変わり、データベース上でパスワードによって管理されるようになりました。2005年以前に発行されたものは権利証と呼ばれ、2005年以降に発行されたものは登記識別情報と呼ばれます。
権利証を失くしたり、登記識別情報のパスワードを忘れてしまうと再発行ができません。その場合は、登記事項証明書で所有者の確認をしましょう。
登記事項証明書は、かつては紙ベースで管理されていた登記簿謄本が、電子データとして管理されるようになった際に名称が変わったものです。
法務局に行けば誰でも取得可能ですが、わざわざ窓口まで行かなくても、インターネットで申請し、郵送で取り寄せることができます。
2-2.自己判断で空き家を解体しない
古い空き家を売却する時に、解体してから売却しよう、と考える人もいます。しかし、自己判断で空き家を解体してしまうのはおすすめできません。
なぜなら、家が建てられている土地は、固定資産税の軽減措置が適用されています。そのため、空き家を解体して更地にしてしまうと、この軽減措置が受けられなくなり、これまでより多くの固定資産税を支払うことになる場合があるからです。
また、なかには古い空き家を購入して、自分好みにリノベーションしたいという買い手もいます。空き家を解体するかどうかについては、まず不動産会社に相談してみましょう。
解体せずに、古家付き土地として売り出す選択肢もあります。
空き家を解体するかどうかの基準については、「空き家や古い家付きの土地は更地にして売却すべき?判断基準をご紹介」で説明しているので、ぜひ読んでみてください。
2-3.契約不適合責任に注意する
空き家は築年数が経っている場合が多いため、売却後、契約不適合責任に問われないよう、特に注意を払いましょう。
不動産の売買における契約不適合責任とは、契約内容に適合しない物件の引き渡しをおこなった場合、売主側で契約内容を満たしていない分について負担しなければならない責任のことです。
古い空き家ほど、シロアリ被害や雨漏りといった不具合を抱えている場合が多いです。空き家を売却し、引き渡したあとで不具合や欠陥が発覚したら、買主は損害賠償や契約解除などを売主に求めることができます。
契約不適合責任では「契約書通りの物件かどうか」が問題であるため、欠陥があることを故意に伝えていなければもちろんのこと、知らなかったとしても責任を問われます。
そのため、売却前にインスペクションを受けておくと良いでしょう。インスペクションとは、住宅の劣化や欠陥の状況を専門家が診てくれる「住宅診断」です。
また、不動産会社に空き家を直接買い取ってもらう「買取」での売却だと、契約不適合責任を負わなくて済みます。
契約不適合責任については「契約不適合責任とは?瑕疵担保責任との違いを確認」で詳しく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
2-4.3000万円の特別控除が受けられる場合がある
不動産を売却した際に利益が出た場合は、譲渡所得税を支払わなければなりません。しかし、相続した空き家で一定の条件を満たしていれば譲渡所得税の3000万円控除が適用されます。
これは「空き家特例(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)」と呼ばれるものです。
空き家特例が適用されるには、相続した日から3年後の12月31日までに売却しなければならない、マンションでない不動産のみに適用できるなど、細かな条件があります。
「空き家特例とは?「相続空き家の3000万円特別控除」をわかりやすく解説!」で詳しく説明しているので、適用されるかどうかぜひ確認してみてください。
2-5.空き家の売却を依頼する不動産会社選びが重要!
自宅から離れた、特に地方の空き家を売却するときに、自分が住んでいる地域の近くにある不動産会社に売却活動を依頼するべきか、それとも空き家がある地域の不動産会社に依頼すべきかを悩む人が多いです。
しかし、遠方の空き家を売却するならば、そのエリアに店舗を構え、現地での売却実績が多い不動産会社に依頼しましょう。
規模にかかわらず、不動産会社が、地域の情報や不動産市場を把握しているエリアはそれほど広くありません。
あなたが売りに出した空き家を買いたいという人で、もしお子さんがいるのであれば、「地域の小学校区と中学校区、そして学校の評判を知りたい!」と思うでしょう。
購入希望者が年配の人であれば、「近くで買い物できるところや病院はあるだろうか?」などを知りたいはずです。
しかし、これらについて、空き家から遠く離れた不動産会社の営業担当者が知るよしもなく、当然ですが、地域の情報や魅力、さらにそこにある空き家の良さを購入希望者に伝えることはできません。
現地での売却実績が多い不動産会社、すなわち、そのエリアでの売却に強い不動産会社であれば、購入希望者に物件の良さをしっかりアピールできるだけでなく、その地域のニーズや相場観を熟知しているため適切な販売戦略を立ててくれます。
売りたい空き家の近くにある売却に強い不動産会社は、イクラ不動産で探すことができます。ぜひ利用してみてください。
2-6.買取の利用も検討する
空き家が古すぎたり大きな欠陥を抱えたりしている場合、売却活動を続けてもなかなか売れないことがあります。
買い手がつかなくて困っているならば、不動産会社に「買取」してもらうことも選択肢の一つです。
買取は、問題がある物件でも対応できる可能性があるほか、不動産会社に直接買ってもらえるため、短期間かつ手間をかけずに売却することができます。
買取価格は、相場価格のおおよそ7割になってしまうことに注意が必要ですが、空き家の状況や事情によっては買取が適していることも多いです。
買取の手順については「不動産買取の流れについてわかりやすく解説!」で説明しています。
3.空き家のままにしておくリスクとデメリット
「売却するのも面倒くさいから空き家のまま放置しているけど、何か問題があるのかしら?」このように思う人もいるかもしれません。
しかし、空き家を放置しておくと、さまざまなリスクやデメリットがあります。
おもなものは、次のとおりです。
- 管理の手間や費用がかかる
- 資産価値が下がる
- トラブルのもとになる
一つずつ説明します。
3-1.管理の費用や手間がかかる
空き家をそのままにしておくリスクとして、まずあげられるのが「空き家を管理する費用や手間がかかる」ことです。
人が住まなくなった家は、建物が傷みやすくなります。
換気がされないことによるカビの発生や水道管に水が通されないことによる配管内部の劣化など原因はさまざまです。
そのため、少しでも家が傷まないようにするためには、空き家に定期的に訪れて換気や通水をする必要があります。
しかし、こういった管理には手間がかかることに加え、もし空き家が遠方にあり、親戚や知人にも頼めない場合は業者に費用を支払って依頼せざるを得ません。
さらに、空き家であっても毎年の固定資産税はかかってきます。
空き家の維持や管理にかかる費用は「空き家の売却費用は?売らない場合の維持管理の費用と比較してみた」で詳しく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
3-2.資産価値が下がる
資産価値がどんどん下がる点も、空き家をそのままにしておくリスクの一つです。
「いずれは空き家を売却しよう」と考えている人も多いでしょう。しかし、空き家を放置している期間が長くなるほど、資産価値が下がっていきます。
なぜなら、建物には耐用年数が設けられており、年月が経つにつれてどんどん価値が下がっていくからです。耐用年数を超えると、建物自体の価値はほとんどなくなってしまいます。
リフォームやリノベーションを行ったとしても、その費用分をまるまる売却価格に上乗せできるとは限りません。さらに、老朽化が進むと建物を解体せざるを得なくなる場合もあります。
その際は、売主が費用を負担し解体したうえで売却をするか、「古屋付き土地」として解体費用分を値引きされた価格で成約するかのいずれかです。
空き家を少しでも高く売りたいのであれば、できるだけ早めに取りかかりましょう。
3-3.トラブルのもとになる
空き家をそのまま放置していると、さまざまなトラブルのもとになる可能性もあります。
空き家の管理になかなか手が回らないケースも多く、遠方に住んでいるならなおさらです。数年放置したままのケースもあることでしょう。
しかし、空き家で手つかずの状態が続くと、防犯面でのリスクが増えます。さらに老朽化が進むことで、地震や台風などによる倒壊の恐れが出てくるだけでなく、その倒壊によって近隣住宅や通行人に被害を与えてしまうかもしれません。
何らかのトラブルが発生した場合、責任を負わなければいけないのは所有者です。もちろん損害賠償を請求されるケースも考えられます。
将来的に使う予定がないのであれば、空き家によって生じる負担やリスクを考えて、やはり早めに売却してしまうのがおすすめです。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 空き家の売却は、通常の不動産売却と同じく、次のような流れになる
①相場価格と不動産会社の情報収集
②不動産会社に査定を依頼する
③媒介契約を結ぶ
④売却活動開始。購入希望者を探す
⑤購入希望者が見つかれば、売買契約を結ぶ
⑥物件引き渡しの準備
⑦残代金の受け取りと物件の引渡し - 空き家の売却では、通常の不動産売却と同じように、次のような費用や税金がかかる
・仲介手数料(取引額800万円以下の場合、仲介手数料の上限額は30万円(税別))
・印紙税(売買契約書が課税文書のため必要)
・登記にかかる費用(登録免許税・司法書士への報酬)
・譲渡所得税(空き家売却で利益が出た場合) - 空き家を売却する際の注意点やポイントは、次のとおり
・空き家の所有者を確認する
・自己判断で空き家を解体しない
・契約不適合責任に注意する
・3000万円の特別控除が受けられる場合がある
・空き家の売却を依頼する不動産会社選びが重要!
・買取の利用も検討する - 空き家をそのまま放置していると、次のような問題が発生するリスクがある
・管理の手間や費用がかかる
・資産価値が下がる
・トラブルのもとになる - 使う予定のない空き家は、リスクを回避するために、思い切って売却するのがおすすめ
空き家は所有しているだけで、管理の手間や費用、固定資産税などがかかります。また空き家の期間が長くなるほど価値が下がってしまうため、将来利用する予定がなければ売却してしまうのがおすすめです。
しかし、いざ空き家を売却するとなると、注意点はわかっても、実際どのように売却すれば良いのかわからない方も多いでしょう。
空き家の売却に不安をお持ちの方は、ぜひイクラ不動産をご利用ください。無料&秘密厳守で簡単に素早く査定価格がわかるだけでなく、売却したい空き家がある地域で、あなたにピッタリ合った不動産会社をランキング形式から選べます。
さらに、空き家の売却でわからないことや不安なことがあれば、宅建士の資格を持ったイクラの専門スタッフにいつでも相談できるので安心して売却を進めることができます。
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