離婚する際に、夫婦で購入した家やマンションに住宅ローンが残っている場合はどうすれば良いのかと悩んでいる人も多いでしょう。
離婚という人生の重要な決断において、住宅ローンの処理は避けて通れない重要な課題の一つです。
こちらは、実際に「イクラ不動産」に寄せられたご相談の一例です。
【実際の相談例】
💬 離婚することになり、住宅ローンが残った家をどうすれば良いか悩んでいます…売ってしまいたいのですが、何から手をつけていいか分からず、とにかく不安です。
この記事では、離婚時の住宅ローン問題に直面した際に「まず何を確認すべきか」から、「売却」「住み続ける」といった選択肢、そして注意すべきポイントまで、一般的な情報を整理して解説します。
この記事で具体的にわかる3つのポイント
- 離婚時に住宅ローン問題で適切な判断をするために、最初に確認すべき事項がわかる
- 「売却」と「住み続ける」それぞれの選択肢と手続きの流れがわかる
- 家の状況(オーバーローン/アンダーローン)に応じた対応方法がわかる
- この記事はこんな人におすすめ!
- 離婚を検討しているが、住宅ローンが残っていて対応方法を知りたい人
- 離婚後、現在の住まいに住み続ける場合のリスクと対策を知りたい人
- 家の売却やローンの名義変更、財産分与の方法について情報を集めたい人
もくじ
1. 離婚で住宅ローン問題に直面したら、まず確認すべき4つのこと
確認すべき4つのポイント
- 家の価値(査定額)とローン残高
- 家の名義人(所有者)は誰か
- 住宅ローンの契約者(主債務者)は誰か
- 連帯保証人・連帯債務者の有無
離婚時に住宅ローンの問題が複雑になるのは、「家の所有権」と「ローンの返済義務」が別々に扱われるためです。
適切な判断をするためにも、次の4つは必ず確認しましょう。
1-1. 家の価値(査定額)とローン残高
これが最も重要な確認事項です。
家を現在売ったらいくらになるのか(査定額)、そして住宅ローンがいくら残っているのか(ローン残高)をまずは正確に把握しましょう。
このバランスによって、取れる選択肢が大きく変わります。
1-2. 家の名義人(所有者)は誰か
法務局で取得できる「登記事項証明書」で、家の所有者(名義人)が誰になっているか(夫の単独名義、妻の単独名義、夫婦の共有名義など)を確認します。
家の売却や名義変更ができるのは、原則としてこの名義人だけです。
1-3. 住宅ローンの契約者(主債務者)は誰か
「主債務者」とは、銀行などの金融機関と「金銭消費貸借契約」を結び、ローン返済の義務を負っている人です。
離婚しても、この返済義務は自動的には変更されません。
1-4. 連帯保証人・連帯債務者の有無
契約内容によっては、夫婦の一方がもう一方の「連帯保証人」や「連帯債務者」になっている場合があります。
これも離婚したからといって自動的に解除されるものではなく、重要な確認事項です。
2. 家の価値はプラス?マイナス?「アンダーローン」と「オーバーローン」
2つの状態
- アンダーローン:家の価値 > ローン残高
- オーバーローン:家の価値 < ローン残高
先ほど確認した「家の価値」と「ローン残高」を比較し、ご自宅がどちらの状態にあるかを把握しましょう。
これが今後の選択肢を決定づける重要な分岐点となります。
2-1. アンダーローンとは
家を売却したお金で住宅ローンを完済しても利益が残る状態です。
この場合は、比較的多くの選択肢が取れ、財産分与も現金で行いやすくなります。
2-2. オーバーローンとは
家を売却しても住宅ローンが完済できず、借金が残る状態です。
この場合は、金融機関の承諾を得た「任意売却」や、自己資金による補填が必要になる場合があります。
3. 選択肢①:家を「売却」して清算する
3つのポイント
- 家を売却して金銭的に清算するのが、トラブルが生じにくい方法とされている
- アンダーローンなら、売却益を財産分与に充てることができる
- オーバーローンでも「任意売却」という方法がある
離婚後のトラブルを避けるためには、家を売却して金銭的に完全に清算するのが一般的に推奨される方法です。
3-1. アンダーローンの場合:売却して利益を財産分与
アンダーローンの場合、売却は比較的スムーズに進む場合が多いとされています。
売却代金で住宅ローンを完済し、残った利益を財産分与に充てることが可能です。
- 家を売却し、買主から売却代金を受け取る
- 売却代金で住宅ローンを全額返済する
- 残った利益を夫婦で折半などの方法で分ける
離婚で家を売却する方法については、「離婚で家を売るときの確認ポイント5つ」の記事を参考にしてみてください。
3-2. オーバーローンの場合:任意売却や補填を検討
オーバーローンの場合、家を売ってもローンを完済できません。
このとき取れる選択肢は主に2つです。
- 不足分を自己資金で補填する:預貯金や親族からの借り入れなどでローン残高を完済してから売却する。
- 任意売却:金融機関の同意を得て、ローンが残った状態でも売却できる手続き。競売よりも有利な価格で売れることが多いとされている。
預貯金で補填できない場合、他からの借り入れを利用することになります。オーバーローンを補填するための借り入れについては、「オーバーローンの家を売却する方法」の記事を参考にしてください。
また、任意売却は、専門的な交渉が必要になるため、経験豊富な不動産会社への相談が重要です。詳しくは「任意売却とは?」の記事でも解説しています。
4. 選択肢②:夫婦のどちらかが「住み続ける」
3つのポイント
- ローンの名義人が住み続けるのが、手続きは比較的シンプル
- 名義人でない側(例:妻)が住むのは、様々なリスクを伴う
- 住み続ける場合も、出ていく側への財産分与が必要な場合がある
子どもの学区や生活環境の変化を避けたいなどの理由から、「現在の家に住み続けたい」という希望はよくあります。
ただし、この選択には法的・金銭的リスクがあることを理解しておくことが重要です。
4-1. ローン名義人がそのまま住む場合
住宅ローンの契約者かつ家の名義人が、離婚後もそのまま住み続けるケースです。
この場合、手続き上のリスクは比較的少ないですが、家の価値がプラスであれば、出ていく側に対して財産分与としての現金支払いが必要になる可能性があります。
4-2. ローンの名義人ではない側(例:妻)が住む場合【要注意】
家の所有者かつ住宅ローンの契約者が夫であるにもかかわらず、妻と子がその家に住み続けるというケースは、様々なリスクを伴うパターンです。
【主要なリスク】
- 滞納リスク:元夫がローン返済を滞納すると、競売にかけられる可能性があります。
- 売却リスク:元夫が家の名義人であれば、住んでいる妻子に無断で売却することも法的には可能です。
- 契約上のリスク:住宅ローン契約では、「債務者が居住する」ことが前提。違反すると一括返済を求められるリスクも考えられます。
このような事態を避けるには、次章で紹介する「名義変更」「借り換え」などの対策が必要になります。
離婚後、夫名義の家に妻が住み続ける場合の注意点については、「離婚後も夫名義の家に妻が安心して住むには?」の記事を参考にしてください。
5. 住み続けるなら「名義変更」や「住宅ローンの借り換え」が必要
3つのポイント
- 金融機関はローンの名義変更(債務引受)には、基本的に応じない場合が多い
- 現実的な方法は「借り換え」で名義を住む側に変更すること
- 借り換えには収入審査が必要。安定した収入が求められる
5-1. なぜ「住宅ローンの名義変更」は困難なのか
免責的債務引受という制度を使えば、ローン契約者を変更することは理論上は可能です。
ただし、金融機関が認めることは極めて稀で、実務上は「名義変更=困難」と考えておくべきです。
5-2. 最も現実的な方法は「借り換え」
借り換えとは、現在のローンを完済するために、別の金融機関で新たにローンを組む方法です。
これによってローンの名義を住む側に変更し、将来のリスクを回避することができます。
- 妻が新たな住宅ローンを申請
- 金融機関の審査を通過
- 元夫のローンをそのお金で一括返済
- 同時に家の名義も妻へ変更
ただし、借り換えのためには安定した収入と信用情報が求められます。
住宅ローンの審査に通るかどうかが、住み続けるか売却かを判断する大きな分岐点になると言えるでしょう。
離婚後の家の名義については、「離婚後、家の名義はどっちのものになる?」で詳しく説明しているので、参考にしてみてください。
6. 重要な確認事項:「連帯保証人」「連帯債務者」のリスク
2つのポイント
- 離婚しても、連帯保証人・連帯債務者の返済義務はなくならない
- 保証人から外れるには、代わりの保証人を立てるか、借り換えが必要
離婚届にサインしても、金融機関との契約内容は一切変更されません。
そのため、連帯保証人・連帯債務者としての義務は引き続き残り、主債務者が滞納すれば代わりに支払う義務が生じます。
この責任を解消する方法として、主債務者が借り換えを行い、保証人から外すことが考えられます。
離婚で連帯保証人から外れる方法については、「住宅ローンの連帯保証人から外れる方法」の記事で確認できます。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 離婚時の住宅ローン問題は、まず「家の価値」「ローン残高」「名義人」「保証人」の4点を確認することから始める
- 家の価値がローン残高を上回る「アンダーローン」か、下回る「オーバーローン」かで、取れる選択肢が大きく異なる
- トラブルが生じにくい解決策は、家を「売却」して金銭的に清算すること
- 「住み続ける」選択をする場合は、様々なリスクを伴う。特に「ローン名義人でない側」が住む場合は注意が必要
- 名義変更は原則困難であり、住む側が新たにローンを組んで借り換えする必要がある
- 連帯保証・連帯債務の責任は離婚しても消えないため、早期の対策が重要
離婚時の住宅ローン問題は、感情的な対立も絡み、当事者だけで冷静に判断するのは困難な場合が多いものです。
「住み続ける」という判断が、将来的に困難な状況を招くことがないよう、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを冷静に比較検討することが重要です。
その第一歩として必要なのが、「家の正確な価値(査定額)」を把握することです。
「まだ家を売るかどうかわからない状況で、不動産会社に相談するのは気が引ける…」という方には、ぜひイクラ不動産の利用をご検討ください。
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さらに、宅建士の資格を持つ専門スタッフが、家の売却や不動産会社の選び方などについて、いつでも相談に応じてくれるので安心です。
「離婚で家をどうすべきか」でお悩みの方は、まずは現状を把握し、冷静な判断をしていきましょう。
イクラ不動産については、こちらのページでも詳しく紹介しています。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスや金融アドバイスではありません。離婚に関する財産分与や住宅ローンの処理は、民法、宅地建物取引業法、金融商品取引法等の関連法令と個別の契約内容により大きく異なります。また、金融機関の対応や不動産市場の状況は時期により変動する可能性があります。具体的な対応については、必ず弁護士、司法書士、ファイナンシャルプランナー、不動産の専門家にご相談の上、慎重にご検討ください。