離婚をするとき、結婚してから購入した家やマンションは財産分与の対象になります。
離婚時の不動産の財産分与においては、「評価額」の扱いが大きなカギとなるため、しっかりと理解しておくことが大切です。
本記事では、離婚で財産分与する際の家の評価額を正しく把握し、効率的に売却や財産分与を進めるためのポイントをわかりやすく解説します。
この記事で具体的にわかる3つのポイント
- 離婚で家を財産分与する際、家の評価額が計算の基準になるため、あらかじめ調べておく必要がある
- 離婚で家を財産分与するときは、実勢価格や公示地価を使って評価額を算出する
- 離婚で家を財産分与する際に揉めたときは、不動産鑑定を行って不動産の価家を出し、家庭裁判所の審判手続きによって決定することになる
- この記事はこんな人におすすめ!
- 離婚で家の財産分与を考えている人
- 財産分与における家の評価額を調べたい人
- 離婚時の家の評価額で争いになった場合の対処法を知りたい人
1.離婚時に家の評価額がなぜ必要?財産分与の基本をおさらい
離婚の際、財産分与でトラブルになるケースも多いです。
特に、家やマンションといった不動産は、非常に高額なうえ定価が決まっていないため、財産分与で一番揉めやすいポイントだといっても過言ではありません。
まず、離婚する際に家やマンションの評価額がなぜ必要なのかを説明するとともに、財産分与の基本をおさらいしておきましょう。
1-1.財産分与の基本ルール
離婚の際、夫婦が結婚生活の中で築いた財産は「共有財産」とみなされ、原則として2分の1ずつ分け合うことが財産分与の基本的な考え方です。
たとえば、預貯金や株式、保険といった金融資産に加えて、家やマンションなどの不動産も共有財産に含まれます。
一方で、結婚前から所有していた財産や、相続や贈与によってそれぞれが取得した財産は「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象外となる場合が一般的です。
ただし、結婚後に家の増築やリフォームしていたり、夫婦の共有資金からローンを返済していたりすると、特有財産と共有財産との切り分けが必要になります。
結婚前に購入した家やマンションが離婚の財産分与でどうなるのかについては、「結婚前に買った家は離婚時の財産分与の対象?相手の家をもらうことはできる?」で、親から頭金を出してもらった場合の財産分与については「離婚の際、家の頭金を親や結婚前の貯金から出した場合の財産分与について解説」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
1-2.財産分与で不動産が占める比率が大きい理由
家やマンションなどの不動産は、高額な資産である場合がほとんどです。預貯金や株式などに比べて金額が大きくなりやすく、財産分与において大きなウエイトを占めます。
そのため、不動産をどのように扱うかは離婚時の財産分与の成否を左右する重要なポイントになります。
また、不動産には住宅ローンや名義の問題が絡むことが少なくありません。
ローンの残債をどうするのか、名義が夫婦どちらになっているのか、連帯保証人がついているかなど、現金や預貯金のように単純に「半分ずつ」では済まない複雑さがあることが多いです。
結果として財産分与に時間や労力がかかり、トラブルも生じやすくなります。
離婚の財産分与で家やマンションの名義がどうなるかについては、「離婚後の家は、夫婦「どっちのもの」になるの?名義は関係ある?」で、住宅ローンがどうなるかについては「離婚時の住宅ローン対策!ローンの借り換え、名義変更について解説」でくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
1-3.家の評価額を把握しないリスク
不動産を財産分与の対象とするうえで、まずは家の「評価額」を正しく知ることが欠かせません。
次のようなリスクを回避するためにも、家の評価額の把握は必須です。
1-3-1.不公平な財産分与になってしまう
評価額とは文字通り「その家やマンションにどの程度の価値があるか」を金額化したものです。そのため、家の評価額によって財産分与の額が変わってしまいます。
たとえば、夫婦の財産として「家」と「3,000万円の預貯金」があるケースで考えてみましょう。
【家と「3,000万円の預貯金」がある財産分与の例】
家の評価額が3,000万円の場合
3,000万円+3,000万円=6,000万円
→夫婦1人の取得分は3,000万円
家の評価額が4,000万円の場合
3,000万円+4,000万円=7,000万円
→夫婦1人の取得分は3,500万円
このように、家の評価額と3,000万円の合計を夫婦が2分の1ずつにする場合だと、家の評価額がいくらになるかによって、それぞれが取得できる額が異なってきます。
特に、家をどちらかが所有する代わりに相手に代償金を支払うケースでは、家の評価額が上がると代償金の金額が高額になるので、家を取得する側に不利となり、代償金をもらう側には得になりかねません。
結果的に一方が損をしたり、後から「やっぱり納得できない」とトラブルになったりするケースもあります。
1-3-2.住宅ローン残債とのバランスがわからない
評価額を知らないと、売却した際にローンが完済できるのかどうかの見通しが立ちません。
残債が多い場合はオーバーローンとなり、財産分与どころかマイナスになってしまうことすらあります。
1-3-3.売却プランを立てられない
正しい評価額を把握して初めて、どのくらいの期間でどの程度の金額が見込めるのか、具体的な売却計画が立てられます。
評価額がわからないままでは、不動産会社への査定依頼や売却活動の優先度も決めにくいでしょう。
2.離婚の場合の家の評価額の調べ方
財産分与する際に用いられる家の評価額の調べ方には、次の4種類があります。
- 実勢価格(じっせいかかく)を調べる
- 公示地価(こうじちか)を調べる
- 路線価(ろせんか)を調べる
- 固定資産税評価額(こていしさんぜいひょいうかがく)を調べる
離婚で財産分与するときは、不動産を実際の取引で活用したり売買したりすることが多いでしょう。そのため、①の実勢価格や②の公示地価を使うことがほとんどです。
しかし、相手が代償金を支払うケースなどでは、家の評価額を低くするために路線価や固定資産税評価額による評価を持ち出してくることがあります。注意しましょう。
ここでは、それぞれの評価額の調べ方をくわしく説明します。
2-1.① 実勢価格を調べる
実勢価格とは、実際に不動産の市場で取引されている金額で、最もよく利用されているものです。
離婚で家やマンションの評価額を調べるのであれば、実勢価格が最も適していると言えるでしょう。
不動産の実勢価格を調べたいときは、次の3つの方法があります。
2-1-1.過去の類似の取引事例を調べる
まず、自分で自宅と類似の取引事例を調べてみる方法(取引事例比較法)です。
近隣で同じような条件の家が最近売れているかどうかを調べれば、その金額と同じくらいの金額で売れることが予想できます。
取引事例は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」で調べることが可能です。
しかし、自分で取引事例を調べるには限界があり、また、そもそもマンションや一戸建て、土地はそれぞれ査定方法が異なります。
そのような場合におすすめなのが、イクラ不動産です。
イクラ不動産を利用すれば、無料&秘密厳守で家やマンションの相場価格を知ることができます。
自分で相場価格を調べる方法については、「不動産の相場価格とは?自分でネットで調べる方法をわかりやすく解説!」でもくわしく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
2-1-2.不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する
不動産鑑定士に依頼をして、家やマンションの評価額を出してもらういう方法もあります。
鑑定評価を行うことは不動産鑑定士の独占業務です。
【不動産鑑定士の業務の一例】
不動産鑑定士に依頼すれば、正確な不動産評価額を出してもらうことができますが、費用がかかることがネックです。
鑑定の費用は不動産や鑑定の目的によって大きく異なりますが、数十万円かかります。
そのため、鑑定が必要となるのは、オフィスや大規模な開発を要する土地などを売買するときが多いです。
このような場合は、最低でも数億円の取引になります。お金を借り入れて売買することが多く、貸す銀行としても不動産としての正確な価値がいくらなのか評価(担保)しておく必要があるからです。
離婚の財産分与では、裁判などで効力のある証拠が必要でない限り、不動産鑑定士に査定を依頼することはほとんどありません。
査定と鑑定の違いについては、「土地の「査定」と「鑑定」の違いを詳しく解説」で説明しているので、ぜひ読んでみてください。
2-1-3.不動産会社に査定を依頼する
不動産会社に依頼をすれば、無料で査定してもらうことができます。
不動産会社による査定が無料である理由は、鑑定士資格を持っていない不動産会社が査定価格の費用を有料ですることは法律違反になるからです。
ただし、不動産会社は、売却(仲介)を前提としていない価格査定はしてくれません。なぜなら、不動産取引が成立した際に、不動産会社が成功報酬として受け取る仲介手数料に査定にかかる費用も含まれているからです。
したがって、不動産会社に査定依頼すると、売却するかどうか決まっていなくても、いつ売却予定かを聞かれることになります。
離婚で家やマンションの売却を予定しているのであれば、不動産会社に査定を依頼すると良いでしょう。
イクラ不動産なら、査定価格を知りたいだけの場合でも実勢価格を調べることができるので、まだ売却するかどうか決まっていない段階での査定におすすめです。
さらに、離婚で家を売却することになった場合は、離婚での家やマンションの売却に強い不動産会社をランキング形式で選ぶことができます。
2-2.公示地価を調べる
公示地価とは、毎年、国土交通省が主体となって調査している、全国のポイントとなる地点における地価です。
3月中旬ごろに、全国の主要な新聞紙面で公表されるので、目にしたことがある人も多いでしょう。
実勢価格を参考にして、不動産鑑定士による鑑定や調査などによって国が決定しており、土地を取引する際の指標とされています。
2-3.路線価を調べる
路線価とは、土地の相続税や贈与税を計算するときに使われる評価額です。
路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」とがありますが、単に「路線価」とする場合は「相続税路線価」を指します。
路線価は、公示地価の8割程度です。そのため、路線価を1.25倍すればおよその公示地価がわかります。
2-4.固定資産税評価額を調べる
固定資産税評価額は、固定資産税や建物の相続税と贈与税を計算するときに使われる評価額です。
市町村が3年に1回改定して決定しており、公示地価の7割程度の金額になります。つまり、固定資産税評価額を1.43倍すれば、おおよその公示地価がわかります。
3.離婚の際、家の評価額で問題が発生した場合の対処法
最後に、離婚で財産分与をする際に、家の評価額について問題が発生した場合の対処法について説明します。
3-1.基本的には話し合いで解決する
離婚時の家の評価額について問題が発生した場合、基本的には夫婦で話し合って解決することになります。
第三者に入ってもらうなどして、どちらかが損をしたり得をしたりしないよう、公平な評価額になるよう話し合ってみましょう。
夫婦間で家の評価額について争いになった場合は、売却することも考慮に入れて、それぞれが自分の信頼する不動産会社で査定書を取得して、平均値を取るのがおすすめです。
その際、明らかに突出して高い査定額や低い査定額のものは外すようにしても良いでしょう。
3-2. 最終的には調停や裁判で裁判所に決めてもらう
どうしても離婚協議において夫婦で評価額の折り合いがつかない場合は、家庭裁判所の調停を利用することになります。
その際、家を取得したい方が相手に相当額を支払って代償分割をしたいと希望する場合は、代償金の支払い能力が必要です。代償金を支払う資力がない場合は、売却か競売手続きで家を売り、その売却代金を夫婦で分けることになります。
家を取得する方に代償金の支払い能力があり、かつ夫婦で評価額について話し合ったものの合意に至らない場合は、最後は不動産鑑定を行って審判手続きによって不動産の価格が決まります。
ただし、不動産鑑定費用をはじめ、裁判にかかる費用や弁護士費用などが必要です。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 離婚で家やマンションなどの不動産を財産分与する際は、家の価値となる「評価額」を基準にして計算することになる
- 家の評価額を把握しておかないと、次のようなリスクが発生する恐れがある
・不公平な財産分与になってしまう
・住宅ローン残債とのバランスがわからない
・売却プランを立てられない - 離婚の財産分与で家の評価額を出す場合は、不動産の価値の評価方法の一つである実勢価格を用いる
- 不動産鑑定士に評価を依頼すると、正確な評価額を出してもらえるが費用がかかる
- 不動産会社による家の査定と評価額の算出は無料だが、売却することが前提となる
- 路線価や固定資産評価額は実勢価格よりも低く設定されているので注意する
- 離婚での家の評価額で揉めたときは、夫婦それそれぞれの評価額の平均値を求めるのも一つの手
- 離婚での家の評価額の話し合いがまとまらない場合は、不動産鑑定を行って不動産の価値を出し、家庭裁判所の審判手続きによって決定する
離婚の際、家やマンションの評価額が決まらないと財産分与の話がまとまりません。そのため、双方がどこかの点で妥協して、話合いを進めていくことになります。
どうしても話し合いで納得できず、不動産会社の査定では家の評価額を決められない場合は、不動産鑑定士に鑑定をしてもらい、それを根拠として裁判所で決めてもらうしかありません。
しかし、鑑定は査定とは異なり、何十万円もの費用がかかってしまうことを踏まえておく必要があります。
とはいえ、離婚の財産分与の話し合い時点で、まだ売却することを決まってもいないのに、いきなり不動産会社に査定を依頼したり、相談するということにハードルを高く感じてしまうのは普通のことです。
離婚することになり、とりあえず自宅の査定価格を知りたいという場合は、ぜひ「イクラ不動産」をご利用ください。
無料&秘密厳守で簡単に素早く家や査定価格がわかるだけでなく、離婚による売却に強い不動産会社をランキング形式で選べます。
さらに、家やマンションの売却でわからないことがあれば、宅建士の資格を持ったイクラの専門スタッフにいつでも相談できるので安心です。
イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。