不動産売買契約も無事に終わり、残すは残代金決済と物件の引渡しのみとなりました。
さて、この残代金決済・引渡し日に、売主が持参しなくてはならないものには、なにがあるでしょうか。
ここでは、残代金決済・引渡しのときに売主が持参する必要があるものと、なぜその書類が必要なのかについてわかりやすく説明します。
もくじ

残代金決済・引渡し時に売主が持参するもの
残代金決済・引渡しのときに、売主は次のものを用意して持参しなければなりません。
- 実印
- 印鑑証明書(3ヶ月以内のもの1通)
- 本人確認書類
- 登記済証(権利証)または登記識別情報通知
- 住民票または戸籍の附票
- 戸籍謄本
- 売却物件の鍵一式
- 買主に引き継ぐ資料等
- 通帳・銀行印
- 仲介手数料
- 登記費用
- 固定資産税評価証明書

①実印
不動産の引き渡し書類などに押印したり、所有権の移転登記を司法書士へ委任したりするために実印は必須です。
不動産が共有名義の場合(例:夫と妻)には、それぞれの実印が必要となります。
②印鑑証明書(3ヶ月以内のもの1通)
実印と印鑑証明書のセットは、間違いなく本人であることと、売主自らの意思によって取り引きに同意していることの証明のために必要となります。
一般的に印鑑証明書の有効期限は3ヶ月とされているため、決済時点において発行3ヶ月以内のものが1通必要です。
居住地の役所、またはマイナンバーカードを持っている場合は、コンビニエンスストアでも取得できます。
また、こちらも共有名義の場合は、それぞれの印鑑証明書が必要です。
③本人確認書類
司法書士に提示するため、本人と確認できる写真付きの公的証明書が必要となります。
- 個人の方(運転免許証・パスポート 等)
- 法人の方(登記事項証明書・印鑑証明書 等)
司法書士には「本人確認義務」があるので、提示がないと手続きを代理することができません。顔見知りであっても、必ず用意するようにしましょう。
④登記済証(権利証)または登記識別情報通知
不動産購入したときの登記済証(権利証)または登記識別情報通知を必ず持参します。
(画像は法務省のHPに掲載されているものです)
紛失した場合は、司法書士にその旨を伝えて証明書を発行してもらいましょう(証明書を作成するのに5万円程度の費用がかかります)。
登記済証と登記識別情報
従来、不動産登記が完了した時に、登記済みであることの証明として「権利に関する登記済証」(いわゆる「権利証」)が登記名義人(所有者)に交付されていました。そして、この権利証を持っていることが不動産の登記名義人の証とされていました。
しかし、平成17年3月の不動産登記法の改正によって、権利証を交付する制度を順次廃止し、その代わりに「登記識別情報」を登記名義人に通知する制度へと変わりました。
この「登記識別情報」とは無作為に決められた12桁の英数字で、その不動産の登記名義人の本人確認のための資料です。
この登記識別情報通知に記載されている英数字を知っていることで、その不動産の登記名義人であることを確認することができるものとされています。
なお、登記識別情報が通知されていない不動産については、発行済の権利証が登記申請の際に必要となります。
⑤住民票または戸籍の附票
住民票は、登記簿に記載の住所から住所移転している場合にのみ必要です。なぜなら、印鑑証明書の住所と登記簿に記載の住所が一致していなければ、書面上での本人確認ができないからです。
また、2回以上住所が変わっている場合は、戸籍の附票(こせきのふひょう)が必要になります。戸籍の附票とは、住所の「移転履歴」が記載された書類のことです。
ただし、本籍地ではない役所からは交付してもらうことはできませんので注意しましょう。
⑥戸籍謄本
戸籍謄本は、結婚や離婚などで、登記簿上の氏名と現在の氏名が一致しない場合に必要になります。
登記の本質は、「家の所有者が登記簿に記載されている本人かどうか」なので、住所と同様に、名字が変わった場合は、変更登記しなければならないからです。
⑦売却物件の鍵一式
物件の鍵一式(勝手口の鍵や物置の鍵なども含む)すべてを持参してください。紛失の場合は、不動産会社が用意した書類にその旨の記載が必要です。
また、併せて宅配ボックス等のカードやポストの暗証番号も必要となるので準備しておきましょう。
⑧買主に引き継ぐ資料等
建築・分譲時のパンフレットや管理規約、総会資料(直近のものがあれば)、各種設備の取扱説明書、検査済証、境界確認書、測量図などを持参します。
紛失した場合は、不動産会社に確認しておきましょう。
⑨通帳・銀行印
残代金決済日には、契約時に受け取った手付金を除いた残りの売買代金等が一括で支払われるため、振り込みで受け取ることが一般的です。
そのため、通帳の持参が必須になります。また、住宅ローンが残っている場合は、ローン返済口座の通帳も必要です。
銀行印は不要な場合が多いので、不動産会社に確認しておきましょう。
⑩仲介手数料
一般的に仲介手数料は、契約時に半金、残代金決済時に半金を不動産会社に支払います。
仲介手数料の上限額 | 売買価格(税抜) |
18万円 | 200万円以下 |
201万円〜400万円以下 | |
売却価格×3%+6万円 | 401万円以上 |
(仲介手数料には、別途消費税がかかります)
ただし、残代金決済時に、買主から受け取る残代金の中から支払うこともあるため、実際には現金を持参しなくてもよいケースが多いですが。
こちらも、不動産会社に前もって確認しておくようにしましょう。
⑪登記費用
「抵当権抹消登記」や「住所変更登記」などが必要な場合に、司法書士に支払う費用です。売却物件の登記状況によって異なります。
抵当権抹消登記とは、住宅ローンを返済したときに、ローンがある旨(抵当権が設定されている旨)を抹消するための登記のことです。
住所変更登記は、前述した通り、登記簿に記載されている住所と現住所が変更されている場合、変更登記が必要となります。
登記費用については、仲介手数料と同じく、買主から受け取る残代金の中から支払うことが多いため、実際に現金を持参しなくて良いケースが多いです。
⑫固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書の評価額が、登録免許税(所有権移転登記する際などの税金)の算出元となるため、司法書士に提出が必要となります。
本人が残代金決済日に出席できないときは?

残代金決済・引渡し日は、銀行が開いている平日の午前中に行われることが多いため、売主ご本人(共有者を含む)が出席できない場合は、代理人が出席することも可能です。
その場合は、次の書類が必要となります。
- 本人の委任状(本人の自署と実印を押印)
- 本人の印鑑証明書(3ヶ月以内のものを1通)
- 代理人の印鑑証明書(3ヶ月以内のものを1通)と実印
- 売主の本人確認書類と代理人の本人確認書類
例えば、夫と妻の共有名義の場合で、妻だけ出席する場合にも上記の書類が必要です。ただし、当日出席できなくても、事前に司法書士と本人確認の面談が必要です。
当日の流れについては「残代金決済日・物件の引渡し当日の流れについて」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
まとめ
一般的に、残代金決済・引渡しの日程が決まれば、不動産会社から「残代金のご案内」が自宅に届きます。その案内に、用意が必要なものについて記載されていますので、確認しながら用意しましょう。
残代金決済・引渡し日当日までの流れについては「不動産売却の流れをイラスト解説!」も併せてご覧ください。
決済当日に「この書類を忘れた」ということがないように、不動産会社への確認は必須です。