入院している父が実家を売却したいと言っているのですが…
売主が入院中でも、家を売ることはできるのでしょうか。
こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
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売却する家の所有者が入院中や療養中などで、自身で売買契約を締結するのがむずかしい場合があります。
しかし、売主が入院中であっても、家やマンションなどを売却することは可能です。
ここでは、売却する家の所有者や売主が入院している場合、どのようにすればよいかについて詳しく説明します。
もくじ
1.病院で契約する
売主が入院中であっても、家やマンションなどを売却する方法の一つは、買主や不動産仲介業者に病院まで出向いてもらい、病院で契約するというものです。
家や土地などの売買契約を結ぶ際の場所は法律で特に定められているわけではないため、売主と買主が合意をすれば、売主が入院している病院で契約することができます。
契約場所を病院に変更してもらいたい場合は、まず、売却を依頼した不動産仲介業者にその旨を伝えて、買主にお願いしてもらいましょう。
2.持ち回り契約をする
「持ち回り契約」とは、その名の通り、不動産仲介業者が契約書を「持ち回って」契約を締結するというものです。
通常の不動産売買契約では契約当事者が揃った状態で契約書に署名、捺印をしますが、両者の日程がどうしても合わない場合や遠方の場合などは、売主と買主が合意をすれば別々に署名、捺印することもできます。
よって、不動産仲介業者に持ち回り契約を申し出て、病院まで出向いてもらうことも可能です。
持ち回り契約の捺印の順番は売主からでも買主からでも問題はありませんが、契約時に手付金を支払うことになっている場合は、預かり証を発行するなど授受の方法に注意しましょう。
3.代理人に売却を依頼する
買主に病院まで出向いてもらうことが難しい場合や、病院であっても売主が契約することが難しいような場合は、代理人に契約を依頼することもできます。
代理人に売却を依頼する際の流れについて説明します。
3-1.委任状が必要
代理人に売却を依頼するには、売主による代理人への委任状が必要です。
委任状に必要な記載内容は、次の通りです。
- 「不動産の売却を代理人に委任する」という旨の記載
- 売却する土地などの情報(地番、地目、地積など)
- 売却の条件(売却価格、手付金額、引き渡し予定日、など)
- 委任の範囲などあらかじめ決めておいた内容について
- 委任状の有効期間
- 委任者(売主本人)の住所、氏名および実印での捺印
- 代理人の住所、氏名
また、委任状とあわせて、委任者(売主本人)の印鑑登録証明書と住民票(3ヵ月以内に発行されたもの)、代理人の実印と印鑑登録証明書(3ヵ月以内に発行されたもの)と身分証明書(免許証やパスポートなど)が必要です。
3-2.本人確認が必要
売主からの委任状があれば、代理人による土地の売買契約は可能です。
しかし、代理人になりすまして土地を騙し売ろうとするような犯罪を防止するために、契約を仲介する不動産業者(宅建業者)や司法書士などの特定事業者には、売主の本人確認をすることが「犯罪収益移転防止法」により義務付けられています。
ここでは、どのような方法で本人確認をするかについて詳しく説明します。
3-2-1.不動産会社による本人確認
代理人による売買契約時だけでなく売主本人が契約する場合であっても、仲介をする不動産業者(宅建業者)は売主の本人確認をすることになっています。
本人確認の方法は、免許証やパスポート、マイナンバーカードなどで本人確認をし、そのコピーをとって保管しておくというものです。
売主本人に直接会えない場合は、契約関係の書類を書留などの転送不要郵便で送り、本人確認をするなどの方法をとります。
3-2-2.司法書士による本人確認
不動産登記を独占業務とする司法書士も、「犯罪収益移転防止法」により特定事業者に指定されているため、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの顔写真付き証明書や、実印と印鑑登録証明書などで売主の本人確認をおこないます。
これは、司法書士を騙して、土地など不動産の名義を変更させるといった犯罪を防ぐためです。
本人確認書類の提出以外にも、本当に売主がその土地の持ち主であるかどうかを確認するために、生年月日や干支、過去に住んでいた住所、当該不動産の取引経緯などを直接ヒアリングして確認することもあります。
4.子や孫に名義を変更してから売却する
入院中の売主の家や土地などを売却するには、家や土地などの名義を子や孫に変更した後で、子や孫が売却するという方法もあります。
ここでは、子や孫に名義を変更する具体的な方法や手順についてみていきましょう。
4-1.贈与で名義変更
子や孫に名義を変更する方法の一つが、無償で譲り渡すというものです。
しかし、無償で譲り渡すと「贈与」とみなされるため、1月1日から12月31日までの1年間に贈与した合計額(=家の資産価額)から、基礎控除額の110万円を差し引いた額に応じて10~55%の贈与税が課されます。
例えば、500万円の資産価額の家を20歳未満の子に贈与した場合の贈与税の計算は、次の通りです。
500万円 - 110万円 (基礎控除額)= 390万円
この額に贈与額に応じた税率を乗じて、控除額を差し引いた額が譲与税額になります。
390万円 × 20% - 25万円 (控除額)= 53万円(贈与税額)
贈与を受けた人が譲与税を納付しなければならないので、上記の場合だと、子は53万円を納税することになります。
4-2.売買で名義変更
子や孫に名義変更するもう一つの方法として、子や孫に贈与ではなく家や土地を売却するというものがあげられます。
子や孫に不動産を売却する手順そのものは、通常の売却手順と同じです。
また、売却した際に売却益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年の確定申告で譲渡所得税を納めなければならない点も同様になります。
しかし、子や孫に家を売却した際には、マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を受けることができません。
この特例が適用されると、譲渡所得から3000万が控除されるため、所得税が課せられるのは3000万円を超える部分のみになるのですが、子や孫に売却した場合は、譲渡所得額すべてに譲渡所得税が課せられるので注意が必要です。
子や孫に家や土地などを売却する場合は、子や孫は家の購入代金が必要となり、親側は、譲渡所得がある場合は譲渡所得税を納付することになります。
ただし、市場の相場とかけ離れた安い金額で売却した場合は、売却であるにもかかわらす贈与と見なされ、贈与税が課せられることがあるので注意しましょう。
5.名義人の意識がない・名義人が認知症の場合
次に、入院中であるなしにかかわらず、売主の意識がない場合や認知症などによって判断能力がないとみなされる場合に家や土地などを売却する方法について説明します。
5-1.成年後見制度を利用する
十分な判断能力や意思能力がないとみなされる人が不利益を被ることがないよう後見人を選定し、法律的に支援したり保護したりするための制度が「成年後見制度」です。
成年後見制度は「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つの制度があり、すでに判断能力がないとみなされる場合は「法定後見制度」を利用して後見人を決めることになります。
5-1-1.成年後見人を決める
成年後見人を決めるためには、家庭裁判所に申し立てをします。申し立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官などです。
申し立てには、主に次のような書類が必要になります。
- 申立書
- 戸籍謄本
- 後見登記事項証明書
この他に、申し立て手数料、登記手数料、通信費用などが必要です。場合によっては診断書や財産目録などの提出を求められることもあります。
5-1-2.裁判所の許可を得る
申し立てをしたら家庭裁判所で後見人の審理がおこなわれて審判がなされます。後見人の決定後、審判書謄本が裁判所から送られてきて、後見登記されると手続きが完了です。
申し立てをする際に後見人の候補を記入して提出しますが、必ずしも候補者が後見人に選ばれるとは限りません。
裁判所の審理によっては、親族ではなく弁護士や司法書士などが後見人になることがあります。
売主の成年後見人に選定された人は、売主に代わって不動産売却をすることができますが、契約を締結する際には家庭裁判所の許可が必要です。
後見人の選定には、申し立てから決定までの期間が1~2ヵ月程度かかることもあるので、その期間も考慮して売却予定を立てるようにしましょう。
まとめ
売主が入院中や契約の場に立ち会えない場合でも、家やマンションなどの不動産を売却することは可能です。また贈与税はかかりますが、子や孫に不動産を贈与することもできます。
贈与税がかからないようにするために子や孫に売却するのであれば、市場の相場からかけ離れた額にならないようにすることが大切です。
売却したい不動産の相場価格がいくらぐらいかを知りたい場合は、イクラ不動産にご相談ください。
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