
母親が1年前から施設に入っているのですが、その何年か前から家を売却したいと言っていました。
子どもの私が代わりに実家を売却するにはどうしたらいいのでしょうか?
こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
※イクラ不動産は不動産会社ではなく、無料&匿名で不動産の相談・会社選び・査定ができるサービスです。
実の子であっても、親名義になっている家は勝手に売却することができません。
そこで、親の家を子が代わりに売却する方法として、「代理人になる」または「成年後見制度を利用する」という2つの方法があります。
こちらでは、この2つの方法を利用して親の家を代わりに売却する方法についてわかりやすく説明します。
もくじ
1.親名義の不動産を「代理」で売却する
親が同居することになった、施設に入ることになったなどで、親の家を売却したいと考えることがあります。親名義の不動産を売却する方法の一つが、親の「代理人」になることです。

と考える方もいますが、「親子である」という理由だけで、別人格である親の家を子の勝手な判断で処分することは法的に認められていません。
子が親の家を売却するためには、きちんと「代理人」となる手続きを踏む必要があります。
1-1.代理とは
「代理」とは、本人以外の人間が、本人のために意思表示を行うことによって法律行為を行うことを指します。民法では、
とされています。
つまり子が代理人となった場合、親に代わって家の売却を行えますが、その契約は親と買主の間で直接結ばれるものであり、売却によって得られた金額は、親のものになります。
代理と似たものに「使者」がありますが、使者は本人がどんな法律行為をするか決めたことを、相手側に伝達する人を指します。つまり本人の意思を伝えるだけで、意思表示や意思決定はできません。
もし使者によって何かの契約が成立したとしても、それ自体は本人にとって無効とされる点が、代理とは異なります。
そのため、親の家を親の代わりに売却する場合には、「代理人」となる必要があるのです。
1-2.代理人になるには「委任状」が必要
子が代理人となって親の家を売却するためには、親から代理権を委任されていることを第三者に証明する「委任状」が必要になります。
不動産の売却には、買主はもちろん、不動産会社や司法書士など多くの人が関係してきます。子がいくら代理人であると主張しても、委任状がなければ取引を行うわけにはいきません。
もし実際は委任されておらず、子が勝手に売却しようとしているのであれば、契約が無効になる、手付金を持ち逃げされるなど大きなトラブルになる可能性があるためです。
委任状を作成するときには、代理権を付与する「委任の範囲」をできるだけ詳細に指定することがポイントです。子が代理人になると、親に相談することなく判断を下せるので、「不動産の売却を一任する」といった内容だと、望まない金額で売却してしまう心配があります。
具体的には、以下の項目をあらかじめ定めて記載しておきましょう。
- 売却物件の情報
- 売却価格や手付金の額
- 振込先
- 代理人の金額交渉権の有無や交渉金額の幅
- 代理人と委任する人の情報(住所や氏名など)
- 委任状の有効期限
なお、委任状は不動産会社で用意してくれることが一般的です。委任状には実印で押印し、印鑑証明書の添付が必要となります。
1-3.本人確認が必要
親の実印が押された委任状があっても、それが偽造されたものでないかどうかを確かめるため、不動産会社が本人の意思確認を行うのが一般的です。
親子であれば実印の場所を知っていても不思議ではなく、委任状は簡単に偽造できてしまいます。
委任状が偽造であった場合、リスクを負うのは買主側です。買主側としては、慎重を期す必要があり、そのために親に直接意思確認が行われるのです。
2.認知症になった親の不動産を売却する
親の代理人になれば子が親の不動産を売却できることが分かりましたが、親が認知症などで売却の意思表示や、委任状の作成ができないこともあります。
そのような場合には、「成年後見制度」を活用するのが一般的です。成年後見制度とは、認知症や障がいなどによって判断能力が不十分な人を、法的に保護する制度のことです。
判断能力が衰えてしまった場合、悪意を持った人にだまされて不利な契約を結んでしまう可能性があります。
そのような場合に備えて本人をサポートする「後見人」などをつけ、不利益を受けないようにすることが制度の目的です。
成年後見制度には、「任意後見制度」と「法定後見制度」がありますが、法定後見制度では、子が親の後見人などになって不動産を売却することは困難なのが現状です。
それぞれどのような制度か、詳しく説明していきます。
2-1.任意後見制度を利用する
任意後見制度は、判断能力がまだ十分あるうちに、将来判断能力が落ちてしまう場合に備えてあらかじめ任意後見人を選んでおく制度です。任意後見人は、本人の生活や財産管理を委託されます。
任意後見制度では、本人と任意後見人が、公正証書によって委託する内容について任意後見契約を結びます。任意後見制度は、本人がどのように自分の財産管理を行うかを自由に決められるので、自分の子どもを任意後見人に選んでも問題ありません。
しかし任意後見制度は、親の判断能力があるうちに任意後見契約を結ぶ必要があるので、認知症になってしまった後では制度を利用できないことが問題です。
親の不動産をのちのち子が処分する必要があると考えられる場合には、家族でよく話し合い、制度の利用を検討するようにしましょう。
なお任意後見制度では、実際に制度を利用するときには家庭裁判所に任意後見の申し立てを行う必要があります。
詳しい手続きの流れについては「任意後見の申し立て手続き」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
また実際に親の家を売却するときには、居住用不動産であれば裁判所と任意後見監督人の許可を得る必要があることも留意しておきましょう。
2-2.法定後見制度を利用する
法定後見制度では、家庭裁判所によって後見人などが選ばれ、本人が不利益を受けないように代理して契約行為を行ったり、またその代理権が与えられたりします。
法定後見制度は、さらに以下の3つに分かれ、不動産取引においてはそれぞれの役目が異なります。
- 後見:判断能力が非常に衰えている人を支援します。本人が不動産取引をする場合には、法定代理人として後見人が行わなければなりません。
- 補佐:判断能力にかなり衰えがある人を支援します。本人が不動産取引を行うときには、補佐人の同意が必要です。
- 補助:判断能力に少し衰えがある人を支援します。補助においては本人の法律行為は制限されていません。本人が不動産取引を行うときには補助人の同意を要するとの審判がなされている場合に限り、補助人の同意が必要です。また特定の法律行為について補助人に代理権を付与するとの審判がなされている場合には、補助人が本人の代理人となり不動産取引を行えます。
法定後見制度では、申し立てを行うときに子を後見人などの候補者として推薦できます。しかし親に多額の預貯金などがある場合には、後見人として選ばれるのは難しく、弁護士や司法書士などが選ばれるのが現実です。
最高裁判所事務総局家庭局が発表した「成年後見関係事件の概要―平成31年1月〜令和元年12月」を見ても、配偶者や親、子などの親族が選任されたのは、全体の約21.8%しかありません。
成年後見制度が開始された平成12年には、親族が選ばれる割合が90%を超えていました。にもかかわらず親族が後見人に選任されなくなったのは、親族が後見人になると勝手に財産を使い込むなどの不正が行われる割合が高かったことが理由といわれています。
法定後見制度を利用する際のその他の注意点については「法定後見制度で注意すべき3つのこと!」も併せてご覧ください。
まとめ
介護費用を捻出したいなど、たとえ親のために使う資金を確保するためであっても子が勝手に親名義の家を売却することはできません。
そのため子が親の家を売却する必要があるのなら、親の判断能力が落ちてしまう前に代理人となって売却するか、任意後見制度を利用して任意後見人になっておくのが現実的です。
とはいえ、親の家を売却してどのくらい資金が確保できるものなのか、気になるという方も多いです。
そのような場合は、ぜひ「イクラ不動産」にご相談ください。
無料&秘密厳守で、簡単にお家の相場価格がわかります。さらに、あなたの状況にピッタリ合った売却に強い不動産会社を選ぶことが可能です。
- 合わせて読みたい
- 不動産会社や担当者を変えたい!変更方法と注意点についてまとめた
- 【売却】媒介契約中に家が売れなかった!どうしたらいい?
- 媒介契約の解除は費用がかかるの?トラブルにならない方法教えます!
- 売却中に不動産会社を変更する方法についてわかりやすく解説する
- 【媒介契約の期限が切れる前に!】今後どうすればいいの?
- 築年数50年超えの家を売却したい!少しでも高く売るポイントを確認
- 同居が理由での家の売却方法(マンション・戸建て・土地編)
- 家を売却し始めたけど全然売れない!2つの理由と解決方法をまとめた
- 家がどうしても売れない場合に売る方法とは?
- 買い替え(住み替え)したいのに家が売れないときの対処方法
- 価格を下げるべき?媒介契約中の価格変更の基準とは
- 火災保険や地震保険に家財補償は必要なのかまとめた
- 火災保険に水災補償をつけるべきか判断する方法についてまとめた
- 火災保険や自動車保険などに付けられる個人賠償責任特約とは?
- 空き家の火災保険はどうすべきかについてまとめた
- 自然災害があった際に使える国の支援制度などについてまとめた
- 火災保険だけでは不十分?地震保険についてわかりやすく解説する
- 借地の家はなぜ安いの?査定方法と高く売却する方法をまとめた
- 浸水した家は安くなる?できるだけ高く売却する3つの方法
- 浸水想定区域にある家は売却できる?ハザードマップと価格との関係
- 川沿いにある家は売却するときに売れづらいって本当?
- ペットを飼っていた家は査定額や売却価格が下がるの?ポイントを解説
- 団地の売却を成功させよう!高く売るためのポイントを解説
- 台風被害にあった家の売却で注意すべきことは?3つのポイントを解説
- どうする?認知症になった親の家を売却する方法!手順や注意点
- 「成年後見制度」を利用して、成年後見人が親の不動産を売却する方法
- 太陽光発電を設置している家は売るときにどのくらい高いの?
- タワーマンションを高く売却するために!タイミングや特徴を掴もう
- 【墓地に近い家】売却したいけど安くなるの?ポイントを押さえよう
- 葬儀場近くの家の売却は難しい?価格への影響をチェック
- 日当たりが悪い家だけど売却したい!上手に売却するコツを紹介
- マンションの内覧件数が少ない?3つの対処方法で売却を成功させよう
- 傾いている家でも売却できる?傾きの調べ方や売却方法を解説
- 所有者以外が家などの不動産売却を代理でする方法と委任する際の注意点
- 水路に接した家や土地を売却するには占用許可が必要って本当?
- 身内に家を売却するには?親族間売買の注意点を知っておこう
- マンションの建て替えがなくなった!将来を見据えてどうすべき?
- 住宅の寿命は何年くらい?寿命を伸ばす方法もチェック
- 連棟住宅の売却は難しいの?ポイントと注意点をチェックしよう
- 家の耐用年数ってどれくらい?家の価値はいつまであるのか
- 湿気の高い家は売却できる?原因と対策を知っておこう
- マンションの耐用年数とは?価値はどれぐらい下がるの?
- 越境物のある家を売却することはできるの?その方法を知っておこう
- 所有者や共有名義人が行方不明に!家を売却する方法はあるの?
- お風呂がない家でも売れる?売却方法を工夫しよう!
- 旧耐震基準の家を売却したい!高く売るためにできることとは
- 【家の売却】値下げはどれくらいが妥当?損をしない値下げ方法とは
- 古くて汚い家だけど売却できる?手放す方法あります
- 不動産売却における減価償却とは?計算方法を知っておこう
- ひび割れのある家を売るには?上手に売るコツを確認
- ひな壇になっている土地の売却はどうやるの?
- 雨漏りした家を売却したい!上手に売却するためのポイントを解説
- 液状化した土地に建つ家は売却できる?売却方法と注意点をチェック
- 区画整理地だけど売却できる?事業段階ごとの売却の傾向と注意点
- 結露しやすい家は売却できるの?結露が発生する原因と売却方法3選
- 隣地と高低差のある土地を売却するには?売却が難しい理由を解説
- 雑種地とは?地目が雑種地の一戸建てを売却する方法
- 別荘を売却したい!売れにくい理由と上手に売却する方法を解説
- 同居するなら親子リレーローンを検討しよう!メリットと注意点
- 入院中に家を売却するにはどうするの?対処方法を解説
- 底地を売却したい!高く売れる方法を見つけよう
- 店舗住宅って売却できる?注意点と売却方法をチェック
- 【お家の売却】送電線下の家は安くなる?売却に影響するポイントを確認
- 都市計画道路予定地って売却できる?事業決定前なら可能です
- 埋蔵文化財がある土地に建つ家の売却はどうやるの?ポイントを確認