この記事では不動産にまつわる借金問題と、その対処法を多岐にわたって解説します。
借金問題があり、不動産を活用してそれを解決したいというような場合や、不動産を売却せずに残せる方法を探しているなどの場合は、ぜひ一読してみてください
具体的に分かるのは、次のようなことです。
- 借金による家の差し押さえの対処法
- 家を担保にしてお金を借りる方法
- 不動産売却と生活保護について
- 不動産売却とマンションの管理費滞納
- 家族の借金で家を取られない方法
- この記事はこんな人におすすめ!
- 借金を抱えており、住宅ローンが残っている
- 借金返済が厳しいが家を手放したくない
- 不動産を売却して借金の返済に充てたい
- 家族の借金を背負いたくない
この記事のポイントのまとめ
1.「不動産×借金問題」への対処法4選
不動産と借金問題の4つの対処法の紹介
①借金による家の差し押さえの対処法
- 住宅ローンが残っているかどうかで、対処方法が変わる
- 住宅ローンが残っていれば借金による差し押さえは実行できないが、住宅ローンの滞納だと差し押さえられるため任意売却を検討する
- 住宅ローンがない場合は差し押さえられる場合があるが、競売にかけられる前であれば任意売却が可能
②借金返済が厳しくても家を手放ずにすむ方法
- 住宅ローン以外の借金の返済が厳しくても家は残したいという場合は、「任意整理」や「個人再生」という方法がある
- まず任意整理の利用を検討し、それでも返済が難しい場合は個人再生の利用を考える
③家を担保にしてお金を借りたい場合
- 「不動産担保ローン」を使えば、家を担保にしてお金を借りることが可能
- 住宅ローンが残っていても、不動産評価額が住宅ローンの残高よりも高ければ利用できる場合がある
④家族の借金で家を取られないためには
- 借金の名義人や連帯保証人になっていなければ、家族の借金で家を取られることはない
- 家族が家を担保にして借金をしている場合は、競売にかけられることがある
- 担保になっているかどうかは、登記簿謄本の写しや登記事項証明書で確認できる
2.「不動産×現金化」の対処法3選
不動産売却で借金問題に対処する方法を3つ紹介
①不動産を売って借金を返済する方法
- 不動産売却の方法は、大きく分けると「仲介」と「買取」の2つ
- 仲介だと高く売れる可能性が高くなるが、売却期間が長くなる
- 買取だとすぐに現金化できるが、仲介よりも安くなる
- 売却額で住宅ローンが完済できない場合は「任意売却」の利用を検討する
- 売却した家を新たに借りることで住み続けられる「リースバック」もある
②買取を利用する場合の注意点
- すぐに現金化できる買取は、借金問題の解決方法として利用されることが多い
- 買取で高く売るためには、複数の不動産会社の見積額を比較する
- 買取にかかる費用などを差し引いて、最終的に手元に残る額が一番高くなるところを選ぶ
③共同名義の不動産の持分だけを売却する方法
- 共同名義の不動産は、名義人全員の同意がなければ不動産全体を売却できない
- 自分の持分だけを売却することは可能だが、まず売れることはない
- 共同名義人の同意を得て不動産全体を売却し、売却代金を持分に応じて分けるのがおすすめ
3.その他「不動産×お金の問題」への対処法3選
そのほかの不動産が絡むお金の問題への対処法を3つ紹介
①家を売らずに生活保護を受けたい場合
- 居住用の家やマンションであれば、売却せずに生活保護を受けることは可能
- 不動産評価額が高すぎる場合は、売却して生活費に充てることが求められる
- 住宅ローンが残っている場合は、生活保護で受給するお金をローンの返済に充てることになるため、売却しなければならない
②借金は相続せずに不動産を相続する方法
- 一般的に、借金などの負の相続を放棄するのであれば、不動産などのプラスの相続も放棄しなければならない
- 「限定承認相続」にし、競売にかけられた家に対して「先買権」を行使すれば、借金は相続せずに家を残すことができる
- 限定承認手続きは複雑になるため、司法書士や弁護士に依頼するのが一般的
③個人再生や自己破産は最終手段
- 借金がどうしても返済できない場合の手段として、個人再生や自己破産がある
- 自己破産では借金のほとんどの返済がなくなるが、家も失うことになる
- 個人再生では家を失わずに済む
- どちらも社会的信用を失うだけでなく、家族への影響もあるため、できるだけ家の売却などで対処できないかを考えるのがおすすめ
1. 「不動産×借金問題」への対処法4選
家やマンションといった不動産を所有していて借金問題が発生した場合、家を売らないといけないのかや、家を差し押さえられるのではないかといった、不動産への影響を心配する人も多いでしょう。
ここでは、不動産と借金問題で発生する悩みや困り事への対処法を4つご紹介します。
家やマンションなどの不動産を所有していて借金問題で悩んでいる方は、ぜひ一読してみてください。
1-1. 借金による家の差し押さえの対処法
差し押えとは、借金などの返済を長期間にわたって滞納している場合、債務者(借金がある人)が預貯金や給与、不動産、車などの財産を勝手に処分したり使ってしまったりできないように国が制限することです。
お金を貸した人(債権者)が裁判所に申し立てることで差し押えられた財産は、強制的に競売で売却されるなどして、債務回収にあてられます。
しかし、必ずしもすべての場合において家が強制的に売却されるわけではありません。
また、住宅ローンが残っているかいないかでも、対処方法は変わってきます。
1-1-1. 住宅ローンが残っている家の場合
住宅ローンが残っている家の場合、金融機関が設定した抵当権が残っています。
そのため、競売にかけたとしても、まず金融機関への返済が優先されるため、借金の債権者が債務回収できる可能性はほとんどありません。
このように、差し押さえをしたとしても債務回収が見込めない場合は「無剰余取消」となり、差し押さえの申し立ては受理されない可能性があります。
よって、住宅ローンが残っている家であれば、住宅ローンの返済を滞納しなければ、借金の債権者からの差し押さえはそれほど気にしなくても良いと言えるでしょう。
ただし、住宅ローンの返済が滞ると、住宅ローンを組んでいる金融機関から差し押さえをされることになるため注意が必要です。
1-1-2. 住宅ローンがない家の場合
住宅ローンがない家の場合は、差し押さえられる可能性があります。
一般的に不動産は現金化しづらいため、預貯金や給与などが先に差し押さえられますが、資産価値が高いため差し押さえされることも多いです。
住宅ローンのついていない家を借金の債権者に差し押さえられた場合、競売にかけられる前であれば売却できます。
差し押さえられた家を売却するには、まず借金の債権者と協議をし、抵当権を外してもらってから売り出す「任意売却」の手続きが必要です。
任意売却は専門的な知識が必要なため、すべての不動産会社が扱えるわけではありません。そのため、まず売却したい物件のある地域で任意売却を得意とする不動産会社を探す必要があります。
イクラ不動産なら、地元で売却実績が豊富な不動産会社を選べるだけでなく、任意売却が得意かどうかを調べることも可能です。
また、イクラ不動産独自の価格シミュレーターを使えば、不動産会社による査定の前に、無料で簡単に素早く相場価格を調べることができます。
さらに、売却に関する質問や困り事があれば、宅建士の資格を持つイクラ不動産の専門スタッフに無料で相談することもできるので安心です。
1-2. 借金返済が厳しくても家を手放ずにすむ方法
カードローンや消費者金融など、住宅ローン以外の借金の返済が厳しいけれども家を残したいという場合は、「任意整理」や「個人再生」という方法があります。
この2つの方法を使えば、借金の額を圧縮して家を残すことも可能です。
返済可能額 | 借金の減額幅 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|---|
任意整理 | 借りたお金そのもの(元本)なら返済できる | 元本はそのまま 将来の利息・遅延損害金の削減 |
・毎月の返済額を減らせる(長期分割払いにできる) ・家族にバレにくい ・住宅ローンやカーローンを除外して手続きできる |
・信用情報に事故情報が掲載される(7~10年程度) ・給料差し押さえ(強制執行)を止められない |
個人再生 | 元本も減額してもらわないと返済できない | 借金総額5分の1〜10分の1まで削減 最低弁済額100万円 |
・借金の元本を大幅に圧縮する(減らす)ことができる ・住宅ローンを除外して手続きできる ・給料差し押さえ(強制執行)を止められる |
・信用情報に事故情報が掲載される(10年程度) ・官報に掲載される ・裁判所を介して手続きするため時間がかかる(1年以上) ・任意整理よりも費用がかかる |
「任意整理」とは、債権者との間で裁判所を介さずに話し合いを行い、借金の総額や利息、返済方法などを見直す手続きです。
借金の利息がカットでき、整理する借金を選ぶことができるため、住宅ローンを支払い続けるかわりに家を残すことができます。
「個人再生」とは、裁判所の手続きを通して借金を大幅に減額してもらい、原則3年で分割して支払っていく手続きです。
原則として整理する借金は選べませんが、「住宅ローン特則」を利用すると、住宅ローンの返済はそのままで、カードローンやクレジットカードなど、ほかの借金だけを減額してもらうことができます。
そのため、住宅ローンを支払い続けて家を残すことが可能です。
まずは任意整理を検討し、それがむずかしければ個人再生を検討します。
それでも借金問題を解決できない場合は、自己破産を選択することになりますが、家を失うことは避けられません。
自己破産については、「3-4. 個人再生や自己破産は最後の手段」で詳しく説明しています。
1-3. 家を担保にしてお金を借りたい場合
家を担保にしてお金を借りる方法として、不動産担保ローンがあります。
不動産担保ローンとは、その名のとおり、家やマンションといった不動産を担保にしてお金を貸してもらうというものです。
金融機関によっては、本人だけでなく、家族名義の不動産や購入予定の物件を担保できることもあります。
住宅ローンと似ていますが、住宅ローンで借りたお金は住宅を購入する目的でしか利用できません。
これに対し、不動産担保ローンは、融資してもらったお金をさまざまな用途に使えます。
不動産担保ローンのメリットとデメリットは、次のとおりです。
メリット |
---|
・無担保ローンよりも低金利である ・借り入れできる額が大きい ・返済期間を長く設定できる |
デメリット |
・融資決定の審査に時間がかかる ・無担保ローンよりも手数料が高くなる ・返済が滞ると不動産を失う |
住宅ローン返済中の家であっても、不動産評価額から住宅ローンの残額を差し引いてプラスになる「アンダーローン」の状態であれば、そのプラス分の額を借り入れできる場合があります。
- オーバーローン……住宅ローンの残額>売却額となり、売却額でローンが完済できない状態のこと。
- アンダーローン……住宅ローンの残額<売却額となり、売却額でローンが完済できる状態のこと。
1-4. 家族の借金で家を取られないためには
配偶者や親、兄弟といった家族の借金で家を取られるかもしれないと心配している人もいるかもしれません。
1-4-1. 基本的に家族の借金で家を取られることはない
借金の名義人や連帯保証人になっていなければ、基本的に家族の借金で自分の家を取られる心配はありません。
ただし、家族が借金をする際に、自分の家が担保になっている場合は差し押さえの対象になる可能性があります。
自分の家が担保に入っているかどうかは「不動産登記簿謄本(登記事項証明書)」に記載されているため、心配な場合は法務局から取り寄せて確認してみましょう。
1-4-2. 借金のある家族が亡くなった場合は注意が必要
基本的に家族の借金で家を取られることはありませんが、借金をしていた家族が亡くなった場合は状況が変わるため注意しなければなりません。
借金やその他の負債は「相続」の対象になるため、相続人に引き継がれてしまうからです。
親や兄弟などの財産を相続すると、同時に負債も相続することになるため、相続された借金が返済できなければ、相続人の財産が差し押さえられる恐れもあります。
相続した借金(負債)で家を失わないようにする方法は、次のとおりです。
- 相続をすべて放棄する
- 相続した財産で借金を返済する
- 相続した借金を家以外の資産から返済する
相続を承認するか放棄するかは、相続が発生したことを知ってから3ヵ月以内に裁判所に申し述べなければならないため、早めに計算をして決定しなければなりません。
相続を放棄する場合は、一般的にプラスの相続分もマイナスの相続分も、どちらも放棄することになります。
ただし、手続きは複雑になりますが「限定承認」により相続した家を残すことも可能です。
借金は相続せずに家を相続する方法については、「3-3. 借金は相続せずに不動産を相続する方法」で詳しく説明しているので、そちらをご確認ください。
- 合わせて読みたい
- 借金で家が差押えになったときどうすればよいのかについてまとめた
- 借金で家が競売にかかるケースにはどんなパターンがあるのか?
- 借金返済が厳しくても家を失わずに残す方法は?
- 家を担保にして借金できる不動産担保ローンのメリット・デメリット
- 家を担保にして借金する方法についてわかりやすくまとめた
- 旦那が借金していたら家を取られる?借金取りが家に来る可能性は?
- 父の借金で自分の家を取られる可能性はあるのかについてまとめた
- 土地を売却して借金返済するときに知っておくべき点についてまとめた
- マンションを売却して借金を返済するときの注意点についてまとめた
2. 「不動産×現金化」への対処法3選
所有している家やマンションを売却して、借金の返済に充てざるを得ない場合もあるかもしれません。
少しでも借金を減らすためには、どうすれば良いかを知っておくことが大切です。
ここでは、借金問題に対処するために、不動産を現金化する方法や注意点などをわかりやすく説明します。
2-1. 不動産を売って借金を返済する方法
家やマンションなどの不動産を売って借金を返済する場合、いくつかの売却方法があります。
それぞれの売却方法の特徴やメリット、デメリットは次の表のとおりです。
特徴 | どのような場合に使えるか | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|---|
仲介 | 不動産会社に依頼して買い手を見つけてもらう | 相場価格に近い額で売りたい場合 | 高く売れる | 時間がかかる |
買取 | 不動産会社に直接買い取ってもらう | すぐに現金が必要な場合 | すぐに現金化できる | 売却額が安くなる(仲介の7割程度) |
リースバック | 不動産会社に買い取ってもらい、賃貸として貸してもらう | 売却しても今の家に住み続けたい場合 | 売却しても同じ家に住み続けれられる | 売却額が安くなる(仲介の6〜7割程度) |
任意売却 | 金融機関の承諾を得て、抵当権を外してもらってから売却する | 売却額で住宅ローンが完済できない場合 | 住宅ローンが完済できなくても売却できる | 金融機関の承諾が必要。売却できる期間が短い |
状況によって、選べる売却方法と選べない売却方法があります。
少しでも高く売りたい場合は仲介での売却がおすすめですが、売却期間が長くなるため、返済期日が迫っているなどですぐに現金化しなければならない場合には不向きです。
また、住宅ローンが残っていて、かつ売却額で完済できない「オーバーローン」の状態だと、任意売却以外の方法では売却できません。
現状と借金問題との両方にマッチした売却方法を選ぶことが大切です。
借金問題で家を売却しなければならないけれども、どうすれば良いかわからない場合は、お金の問題に強い不動産会社に相談してみましょう。
また、イクラ不動産でも相談が可能です。
お金の問題に強い不動産会社がわかるだけでなく、宅建士の資格を持った専門スタッフが、あなたの状況をおうかがいして無料でアドバイスいたします。
2-2. 買取を利用する場合の注意点
借金問題で家を売却する場合、急いで現金化しなければならないことが多いため、買取を利用するケースがよくあります。
先にもあげたとおり、買取はすぐに現金化できるというメリットがある一方、売却額が仲介の7割程度になってしまう点がデメリットです。
少しでも高く買い取ってもらうために、次のような点に注意しましょう。
- 買取実績があり、買取が得意な不動産会社を選ぶ
- 複数の不動産会社に買取見積を出してもらう
- 見積もりは、最終的に手元に残る額で出してもらう
仲介で売却する際に、不動産会社から出してもらう査定額は、これぐらいの額で売れるだろうという見込額です。
しかし、買取は実際に買い取ってもらえる額を出してもらうため、少しでも高いところを選ぶことが大切です。
また、買取額だけでなく、そこから買取にかかる諸費用を差し引いて、最終的に手元に残る額がいくらかを出してもらい、一番高い額を提示してくれた不動産会社を選ぶようにしましょう。
2-3. 売っても住み続けたい場合はリースバックがおすすめ
家の売却代金が必要だけれども、子供の転校や引っ越しが大変なので、できれば今の家に住み続けたいというケースもよくあります。
そのような場合におすすめなのが、リースバックです。
リースバックを利用すれば、家を売却した代金を一括で受け取り、その後、賃貸として家賃を支払いながら住み続けることができます。
また、将来的に経済状態が良くなれば、買い戻すことも可能です。
リースバックの詳細については、「【リースバックのまとめ】家を売っても住み続けられる!利用方法や注意点を詳しく解説」で説明しています。ぜひ読んでみてください。
2-4. 共同名義の不動産の持分だけ売却する方法
夫婦の共同名義で購入した家や複数人で相続した不動産の場合、自分の持分だけを売却することは可能です。
ただし、不動産全体を売却することはできないため、持分だけの売却だとかなり安くなってしまいます。
たとえば、不動産評価額2,000万円の半分の持分を売却しようとしても、1,000万円で売れるわけではありません。半分の持分を所有していても不動産全体を自由に活用できないため、購入したい人が現れないからです。
そのような場合、次のような方法を取ることができます。
- 共同名義人全員で売却し、持分に応じて売却代金を分ける
- 共有持分買取業者に、持分だけを売却する
少しでも多くのお金を手に入れたいのであれば、共同名義人全員で売却して売却代金を分けるのがおすすめです。
さらに仲介で売却すれば、高く売れる可能性がより高くなるでしょう。
共同名義人に売却を相談しにくい場合は、共有持分の買取を専門としている不動産会社に買い取ってもらうことも可能です。
ただし、共同名義人全員で売却して売却代金を分ける場合よりも、手に入るお金はかなり少なくなります。
不動産の持分だけ売却する方法については、「不動産の共有持分を買取業者(不動産会社)に売却する際の注意点」で詳しく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
- 合わせて読みたい
- 借金問題を家(住宅)の売却によって解決する方法
- 借金返済のために家(マンション・戸建て)を手放すと解決できるの?
- 借金を返すために家を売却する方法についてわかりやすく説明する
- お金が必要なので少しでも高く家を売る方法(マンション・戸建て・土地)
- 家をとにかく早く売る方法と注意点についてわかりやすくまとめた
- 買ったばかりの家をすぐに売る時でもできるだけ損しないための対処方法
- 家をすぐに現金化するための4つの方法についてまとめた
3. その他「不動産×お金の問題」への対処法3選
最後に、不動産とお金に関するそのほかの問題への対処法をご紹介します。
3-1. 家を売らずに生活保護を受けたい場合
生活保護は、戸建てやマンションなどの持ち家があると受給できないのではないかと思われがちです。
しかし、場合によっては、住み慣れた家に住み続けながら生活保護を受けられることもあります。
厚生労働省による、不動産の所有と生活保護の受給についての具体的な定めは次の通りです。
- 不動産については、売却することが原則
- 被保護世帯の居住の用に供される家屋およびそれに付属する土地については、保有を容認し、保護を適用
つまり、売却をすると住む場所に困るような戸建てやマンションについては売却しなくても良いということになります。
ただし、居住用として利用している価値よりも売却した価格が「著しく大きい(目安として2,000万円以上)」と認められる不動産については、資産の活用という意味で生活保護受給のためには売却の検討が必要です。
さらに、住宅ローン返済中の戸建てやマンションについては、生活費として支給される生活保護費からローンの返済(=資産形成)を行うことになるため、原則として保護の適用は行うべきではないとされています。
生活保護の不動産の所有については、「生活保護を受けるためには家を売却しなければならないって本当?」で詳しく説明しているので、ぜひ一読してみてください。
3-2. マンションの管理費などを滞納している場合
マンションの管理費や修繕積立金は、マンションの区分所有者である以上、支払義務があります。つまり、管理費や修繕積立金の滞納も借金などの債務と同じです。
そのため、滞納を続けると、住宅ローンや借金の返済が滞った場合と同様に、管理組合からの督促から始まり、裁判所からの差し押さえを経て競売にかけられ、最終的にマンションを追い出されることになりかねません。
住宅ローンの支払いと同様に、滞納している管理費や修繕積立金の支払いが厳しい場合は、上記のような事態に陥ってしまう前に売却を検討しましょう。
管理費や修繕積立金を滞納していても、売却額から滞納分の金額を差し引くことにすれば売却は可能です。
住宅ローンの返済が厳しくて任意売却をする場合は、金融機関が管理費や売却額から修繕積立金などの差し引きを認めてくれれば、売却できます。
しかし、認めてくれない場合は、売主自身が負担するしかありません。
マンションの管理費や修繕積立金の滞納については、「マンションの管理費と修繕積立金を延滞していても売却できるの?」で詳しく説明しています。参考にしてみてください。
3-3. 借金は相続せずに不動産を相続する方法
先でも述べたとおり、通常は借金などのマイナスの相続を放棄するのであれば、プラス分も含めたすべての相続を放棄するのが一般的です。
しかし、プラスの資産が負債を上回っていれば相続し、マイナスの資産である負債が上回っていれば相続をしない、という条件付きで、相続人全員が共同して承継することもできます。
これが「限定承認」と呼ばれる方法です。
相続財産に負債がある場合、原則として家や土地などの不動産は競売によって換金され、債権者への弁済にあてることになります。
ただし、限定承認の場合、相続人には「先買権(優先的に買い取る権利)」があるため、家庭裁判所が選任した鑑定人による不動産評価額を支払えば、相続人は家を買い戻すことができるのです。
限定承認の大まかな流れは、次のようになります。
①相続人の確定と財産調査をし、相続人全員の同意を得る(限定承認には、相続人全員の同意が必要)
②必要書類を揃えて、家庭裁判所で限定承認の申し述べをする
- 家事審判申立書
- 財産目録(4種類あり)
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍、改製原戸籍など)
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本(除籍、改製原戸籍など)
- 被相続人に死亡した子がいる場合、その子の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍、改製原戸籍など)、またその子の代襲者が死亡している場合は代襲者の戸籍も必要
※限定承認の申述も、相続を知った日から3ヵ月以内に行わなければなりません。
③財産の清算手続きを行う相続財産管理人を選任する
相続財産管理人は、相続人の中から選ばれます。別に相続財産管理人を選定したい場合は、裁判所への上申書が必要です。
④請求申出の官報公告と請求申出の官報公告を行う
限定承認の受理審判後、限定承認した旨と一定期間内にその請求の申し出をすべき旨を公告します。公告の必要期間は2ヵ月以上です。また、官報公告を出した時点で債権者など判明していれば、別途催告しなければなりません。
⑤鑑定人選任申し立てと先買権の行使
裁判所により選定された鑑定人による不動産評価額が決定すると、先買権の行使によりその額を支払って不動産を買い戻します。ただし、鑑定人による評価額を用意できなければ競売されてしまうため、ある程度の資力が必要です。
⑥債権者や受遺者への弁済
相続財産を換価処分したあと、債権者や受遺者への弁済が行われます。すべて弁済し切れない場合は、債権額の割合に応じた弁済額になります。
このように、限定承認の手続きは非常に複雑になるため、司法書士や弁護士に依頼するのが一般的です。その場合は、別途、報酬の支払いが必要になります。
借金と相続した家をどうするかについては、「借金を相続せずに実家を守る方法についてわかりやすくまとめた」や「借金で家を相続放棄!それでも残る家の管理責任と免れるための方法」で詳しく説明しています。ぜひ一読してみてください。
3-4. 個人再生や自己破産は最後の手段
住宅ローン以外の借金の返済で苦しくなった場合、任意整理でも対処できなければ、安定した一定の収入があり持ち家を所有し続けたい場合は個人再生、借金の返済能力がなく完済できない場合は自己破産を検討することになります。
個人再生と自己破産の違いは、次の表のとおりです。
個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|
最低限返済すべき金額 | 100万円まで(借金総額5分の1〜10分の1まで削減できる) | ほぼすべての借金を減額できる |
持ち家 | 残せる | 残せない |
利用条件 | 返済能力が必要なことが条件 | 返済能力がないことが条件 |
手続き中の制限 | ・クレジットカードの利用禁止・口座凍結(場合による) | ・転居や旅行の制限・一部職業の就業制限・クレジットカードに利用禁止・口座凍結(場合による) |
手続き後の制限 | 一定期間、以下のことの禁止・ローンの利用(クレジットカードの利用、携帯電話の分割購入など含む)・保証人になる | 個人再生と同じだが、禁止期間が長くなる場合がある |
個人再生と自己破産、どちらになってもブラックリストに載るため社会的信用が失われます。
また、個人再生の場合、自己破産と違って家を失うことはありませんが、奨学金の連帯保証人になったり携帯電話を分割支払いで購入したりできなくなるため、家族への影響も避けられません。
個人再生については、「住宅ローンを払えなくなったときに家を残せる「個人再生」とはなにか」で詳しく説明しているので、一読してみてください。
個人再生や自己破産は最終手段とし、まずは金融機関や専門家などに相談をして、家の売却などで借金問題が解決できないか考えるほうが、家族のためにも将来のためにも良いでしょう。
4. まとめ
借金の返済と不動産売却との問題には、さまざまな要素や状況が存在します。
そのため、取るべき方法は一つではありません。何を優先すべきか、何を守るべきかで対処法が違ってくるため、まず問題を整理することが大切です。
また、借金の額や状況だけでなく、家やマンションに住宅ローンが残っているかどうか、残っている場合が売却額で完済できるかどうかが重要なポイントになります。
現在の状況を把握するためにも、借金問題で不動産売却を考えている場合は、今、売りに出したらいくらぐらいで売れそうなのかをまず把握しておきましょう。
複雑な借金問題が絡んだ不動産売却を成功させるためには、地元でそのような売却が得意な不動産会社を探して依頼することが大切です。
イクラ不動産では、地元での売却実績が豊富な不動産会社を探せるだけでなく、特殊な売却を得意しているかどうかもわかります。さらに、イクラ不動産独自の価格シミュレーターを使って相場価格を簡単に調べることも可能です。
また、売却前や売却中にかかわらず、わからないことや不安なことがあれば、宅建士の資格を持ったイクラ不動産の専門スタッフに相談しながら売却を進めることができます。