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公正証書遺言がある場合の家の相続登記の方法について説明する

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公正証書遺言がある場合の家の相続登記の方法について説明する

相続した家の売却を検討しているのですが、公正証書遺言があるので、どのように進めていけばよいのかわからず相談させていただきました。

こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
※イクラ不動産は不動産会社ではなく、無料&匿名で不動産の相談・会社選び・査定ができるサービスです。

遺言書(ゆいごんしょ・いごんしょ)には大きく分けて、亡くなった人自らが書いたものと、亡くなった人が公証人に書いてもらったものの2つがあります。公証人が書いた遺言書を、公正証書遺言といいます。

こちらでは、公正証書遺言がある場合の家の相続登記(家の名義変更)の方法を説明します。

1.公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、亡くなった人が口述(こうじゅつ:口頭で述べること)し、それを公証人(こうしょうにん:私的紛争の予防を防ぐため、証明行為を行う公務員)によって筆記された遺言書のことです。

被相続人(亡くなった方)が遺言を残していた場合、その遺言の内容が優先されるため、基本的に遺言書の内容に従って相続されることとなります。

1-1.公正証書遺言の保管場所

公正証書遺言は、完成すると遺言を遺した方に正本と謄本が交付されます。遺言書をどこに保管するかは人それぞれですが、金庫に保管していたり、信頼できる方に預けていたりするケースが多いでしょう。

公正証書遺言は原本が公正役場に保管されるので、遺言書が見つからなかったり、紛失してしまったりした場合は、公正役場に問い合わせて謄本の交付を請求することができます。

1-2.裁判所による検認手続きが不要

自筆の遺言書でも、必要事項が記載されていれば遺言書としての効力は公正証書遺言と変わりありません。

ただし、自筆の場合は、内容と効力を確認するために裁判所に検認(けんにん:裁判所が調査し認めること)してもらう手続きが必要で、検認には1ヶ月以上を要することもあります。

一方、公正証書遺言は公文書として扱われるため、検認の手続きは不要です。相続登記の際には、そのまま持っていくだけで添付書類の1つとすることができます。

Point

2020年7月10日から施行された「自筆証書遺言の保管制度」を利用していた場合は、遺言書の紛失や相続人による破棄・隠匿・改ざんが生じる恐れがないことから自筆の遺言書であっても家庭裁判所の検認が不要となりました。

「自筆証書遺言の保管制度」とは、自ら作成した自筆の遺言書を法務局に持ち込み保管してもらうことができる制度です。

2.公正証書遺言がある場合の相続登記の流れ

続いて相続登記に必要な書類や流れを説明します。

2-1.相続登記は誰が申請するのか

遺言がある場合の相続登記は、不動産を承継する相続人が申請を行います。相続人が複数いる場合は、その中の誰か1人が相続人全員分を単独で申請することも可能です。

遺言書には、資産の管理や分割手続きをする人である遺言執行者が指定されているケースもありますが、相続登記については関与しません。

なお、遺言の内容が遺贈(いぞう:財産を相続人以外の第三者に譲り渡すこと)であった場合は、この限りではありません。

遺贈の場合は「遺言書がある場合の不動産の相続登記」で詳しく説明していますので、ぜひ読んでみてください。

2-2.相続登記に必要な書類

先述通り、公正証書遺言は裁判所による検認手続きが不要なので、必要な書類を用意すればすぐにでも相続登記することができます。

相続登記するにあたって必要となる書類は次の通りです。

  • 公正証書遺言の正本または謄本
  • 登記申請書
  • 家を相続する人全員の戸籍謄本と住民票
  • 亡くなった人の戸籍謄本と住民票の除票
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記簿謄本

2-3.相続登記の申請先

相続登記の申請先は、所轄の法務局です。

所轄の法務局とは、相続登記の対象不動産を所轄する法務局のことです。GoogleYahoo!などで「地名+法務局」で検索すると所轄の法務局を調べることができます。

この際、登記申請書とともに公正証書遺言を含めた必要書類を提出し、このとき登録免許税を納付します。

登録免許税とは、不動産などの所有権の登記に対して課税される税金のことで、以下の計算方法で求めることができます。

登録免許税の計算方法

固定資産税評価額×0.004

固定資産税評価額は、毎年送られてくる固定資産税納税通知書に添付されている「課税明細書」に記載されています。紛失している場合は、役所で照会することができます。

固定資産税評価額

(※記載場所については、画像と異なる場合があります。)

2-4.権利書を受け取る

相続登記を申請してから1週間ほどで登記が完了し、相続人は権利証や登記識別情報通知を受け取ります。

登記識別情報は、新たに不動産の登記名義人となる人(不動産を相続する相続人)で、かつ相続登記の申請人にしか通知されません。申請人とは、登記申請書に申請人として押印をすることです。

先述通り、相続人が複数いたときは、その中の誰か1人が単独で申請することができますが、申請しなかった相続人は、登記識別情報通知を受け取ることができませんので注意が必要です。

注意

後々、不動産を売却するとなったとき、登記識別情報が一部ないとなると、通常よりも多くの登記手続きが必要となり、費用もさらにかかる可能性があるので、相続登記する際は、必ず相続人全員が登記の申請人となって相続登記手続きを進めるのがよいでしょう。

3.公正証書遺言がある場合の注意点

相続登記には期限が定められておらず、遺言書にも時効のようなものはありません。しかし、相続の承認・放棄の手続きは亡くなってから3ヶ月以内、相続税の納税は10ヶ月以内と定められています。

また、相続した家の売却や活用を考えている場合には、相続登記することが必須条件でもあります。

公正証書遺言は検認の手続きが不要なので、比較的スムーズに相続登記することができます。しかし、次の2つのようなケースでは、相続登記までに時間を有する可能性もあるので注意が必要です。

3-1.①法定相続人が遺留分を主張したとき

基本的に遺言書に書かれていることはなによりも優先されますが、「遺留分」の主張されたときはそちらのほうが優先されてしまいます。

注意

遺留分(いりゅうぶん)とは

遺留分とは、一定の相続人(相続を受ける人)に法律上最低限保証された相続財産の取り分のことです。

「一定の相続人」とは、基本的に配偶者と子と親です。ただし、両親が亡くなっている場合はその上の世代が、子が亡くなっている場合はその下の世代が、何代にも渡って遺留分を主張することができます。

基本的に遺留分として主張できるのは、法定相続分の1/2となっています。

相続人 全体の遺留分 相続財産に対する相続人の遺留分
配偶者のみ 1/2 配偶者1/2
配偶者と子 1/2 配偶者1/4 子1/4
子のみ 1/2 子1/2
配偶者と親 1/2 配偶者1/3 親1/6
親のみ 1/3 親1/3
兄弟姉妹 0 遺留分なし

例えば妻と長男と長女を残して、夫が亡くなった場合を考えてみます。

ご主人様
長男はろくに家にも帰ってこない。相続財産は妻と長女で半分ずつ分けなさい!

夫がこのような遺言書を遺した場合でも、長男は遺留分を主張することができます。

このケースの法定相続分(民法で定められた相続割合)は、次の通りです。

  • 妻:1/2
  • 長女:1/4
  • 長男:1/4

長男は1/4の1/2、つまり1/8を遺留分として主張することができるということです。

このケースで長男が遺留分を主張した場合、公正証書遺言だとしても遺留分の権利に勝つことはできません

この場合、長男は妻と長女に対して遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)をおこないますが、もめれば裁判所が介入する場合もあります。

「全ての財産を○○に与える」
「この子には相続しない」

このように遺言で遺留分が考慮されていないケースでは、公正証書遺言だとしても相続登記に時間を要する可能性があります。

3-2.②相続登記に必要な書類がなかなかそろわない

相続人が2人や3人で、気のしれた家族同士ならあまり問題になりませんが、相続人が何人もいたり、会ったことがない親戚同士が共有者になったりするケースでは、相続登記までに時間を要する可能性が高いです。

相続登記のときに必要になる登記申請書には、その家を相続する人全ての署名の押印が必要となり、戸籍謄本や住民票も相続人全てのものを取得する必要があります。

3-2-1.相続登記は専門家に依頼できる

相続の専門家として、弁護士(べんごし)・司法書士(しほうしょし)・行政書士(ぎょうせいしょし)がいますが、それぞれ役割が異なります。

●遺産分割において、争い事があるとき
→弁護士
●遺産分割において、遺産の中に不動産が含まれないとき
→行政書士
遺産分割において、争い事がなく、不動産が含まれるとき
司法書士

このような場合、費用はかかりますが、司法書士に登記手続きを依頼することで速やかに間違いがなく相続登記することができます。

司法書士に依頼すれば、書類の準備や登記を全て丸投げすることができます。費用は、税金(登録免許税)や報酬を含めて合計平均10~15万円ぐらいです。

まとめ

繰り返しになりますが、相続したお家の売却や活用をするには相続登記する必要があります。

また、相続登記をしないことで、他の相続人に相続登記されてしまう可能性や次回の相続時に手間が増える可能性もあるため、相続登記は速やかに行うことが望ましいといえます。

実際に売るときの流れについては「相続する不動産を売るときの流れ」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。

相続登記は簡単そうにみえますが、戸籍を集め、全ての相続人とやり取りしながら調整し、書類の作成(遺産分割協議書や相続登記申請書)するのは正直面倒で、時間がかかります。

相続した家をどうするのか迷っている、どうしたらよいのかわからないという人はまず「イクラ不動産」をご利用ください。

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