連棟住宅とは、隣家と壁を共有している建物のことです。壁でつながっているため、建物が古くなっても所有者全員の許可が得られなけば大規模な改修工事を実施することができません。
さらに、切り離して再建築することも非常に困難であるため、売却がむずかしいケースも多いです。
連棟住宅を売却するにはいくつかのポイントがあります。こちらでは、連棟住宅の特徴や売却方法について解説します。
- 連棟住宅とはどのようなものか
- 連棟住宅の売却がむずかしい理由
- 連棟住宅を上手に売却する具体的な方法
- この記事はこんな人におすすめ!
- 連棟住宅の売却を考えている人
- 連棟住宅を売るための具体的な方法を知りたい人
もくじ
1.そもそも連棟住宅(連棟式住宅)とは?
連棟住宅とは、隣の家と壁を共用していて、建物としてつながっている住宅のことを指します。
登記上は1つの建物ということになりますが、部屋ごとに所有者が異なっていることが多いです。
土地の広さや形状の問題で、独立した一戸建てを数件建てることがむずかしい場合に、連棟住宅は建築されてきました。
昭和の頃に多く建てられ、数は少なくなりましたが、現在でも存在します。
1-1.テラスハウスとタウンハウスの違い
連棟住宅は、大きく次の2種類に分けられます。
- 長屋(テラスハウス)
- タウンハウス
テラス・庭・駐車場などが、それぞれの家の専用物であるという点が特徴です。
一方、タウンハウスとは、建物以外のテラスや庭、駐車場などが、一部屋ごとに区切られていない連棟住宅のことを指します。
テラスハウスとタウンハウスの違いは、次の図のとおりです。
隣の家と壁がつながっている連棟住宅という点では、長屋(テラスハウス)もタウンハウスも同じです。
しかし、テラス・庭・駐車場が、それぞれの家の専用物であるか共用物であるかという点が、長屋(テラスハウス)とタウンハウスの大きな違いだと言えます。
2.連棟住宅の売却がむずかしい理由
連棟住宅は、それぞれの家の壁が隣家と共有している状態です。
そのため、家を単体として考えることがむずかしく、売却する際にさまざまな問題が出てきてしまいます。
2-1.住宅ローンが組みづらい
家や大きな買い物であるため、ローンを組んで購入する場合が多いです。しかし、連棟住宅を購入する際は、住宅ローンの審査に通りづらいというデメリットがあります。
連棟住宅だと住宅ローンが組みづらい理由として、まずあげられるのが、連棟住宅の価値が低いという点です。
住宅ローンを融資する銀行などの金融機関は、万が一、ローンの返済が滞った場合、担保にしている家を強制的に売却してローンの回収を行います。
しかし、不動産としての価値が低い連棟住宅では、売却しても十分に融資した金額を回収できないリスクが高くなるため、結果として住宅ローンが組みづらくなってしまうのです。
2-2.単独での再建築がむずかしい
連棟住宅が、不動産としての価値が低いとされるのは、単独での再建築がむずかしいからです。
連棟住宅の再建築がむずかしくなる理由として、次のようなものがあげられます。
2-2-1.隣家の許可が必ず必要
連棟住宅は、個々の家が隣の家とつながっているため、再建築をしようと考えた場合、「自分の家の壁=隣の家の壁」となり、隣の家も工事の対象となってしまいます。
したがって、連棟住宅の再建築には、必ず隣の家の許可および承諾が必要です。
再建築の工事を行う場合の騒音・時間・衝撃などの配慮はもちろんですが、隣の家と壁を切り離して再構築する場合には隣の家の壁の強度が弱くならないよう考慮しなくてはなりません。
必ず隣の家が関係してくることが、単独での再建築がむずかしくなる理由の一つだと言えます。
2-2-2.そもそも接道状況によっては切り離せない
狭い土地を有効に活用するために作られた連棟住宅は、切り離してしまうことで、現行の建築基準法における接道義務を満たせなくなることが多いです。
その場合は、建築基準法に適していない住宅とみなされるため、再建築することができません。
接道義務とは?
都市計画区域内で建物を建てる場合、原則として幅員4mの建築基準法上の道路に、2m以上接した敷地(土地)でなければならないと現行の建築基準法で定められています。
もし家を切り離して再建築しようとしても、接道義務を満たすことができない場合は、再建築することができず、連棟住宅を切り離すことができないということになってしまいます。
住宅自体が老朽化している上に再建築も不可能ということになると、住宅の価値はどうしても低くなってしまいます。
上記の図のように、切り離した家だけでなく、切り離された隣家も、建築基準法の接合義務を満たす必要があります。
また、それぞれの市町村が定めた地域、区域によっては
- 建築物の敷地面積を一定以上としなければならない
- 市町村が定めた最低敷地面積が必要
といった決まりがある場合があります。
連棟住宅が建っている土地がその決まりを満たしていない場合には、再建築ができない可能性が出てきてしまうため、連棟住宅の価値が下がる原因となってしまうのです。
3.連棟住宅の売却方法
連棟住宅は売りづらいことが多いですが、売却方法を選べば決して売却できないわけではありません。
ここでは、連棟住宅を売却する具体的な方法を説明します。
3-1.隣家の所有者に購入をもちかけてみる
まずあげられるのが、連棟住宅の隣の家の所有者に購入の意向があるかを確認するという方法です。
連棟住宅は、土地の広さや接道などの問題により、一つひとつを分けてでは再建築が不可であったとしても、隣の家も含めて再建築を考えた場合には、建築基準法を満たして再建築が可能になる場合があります。
特に、隣人が同じような時期に入居している場合だと、建物が同じように老朽化していると考えられるため、隣の家も住み替えや建て替えを検討しているかもしれません。
たとえば、隣の人も「建て替えたいと思っていたから、ぜひ売ってほしい!」となれば、スムーズに売却することができます。
せっかくの機会ですので、まずは隣の住人に購入する意思があるかどうかを相談してみましょう。
3-2.不動産会社に買い取ってもらう
連棟住宅の接地状況や土地の面積にもよりますが、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」という方法もあります。
一般的な売却方法である仲介だと、買い手が現れるまで売却することができません。しかし、買取であれば、物件の状態によっては現状のまま買い取ってもらえるため、早く売却してしまいたい人にとってはおすすめの売却方法です。
ただし、不動産会社は買い取った物件にリフォームなどをしてから一般の消費者に再販売するため、仕入れにあたる買取金額は、相場価格の60%〜70%と安くなってしまいます。
「買取」について、くわしくは「不動産買取とは?なぜ安くなる?相場額や注意点、おすすめの場合を解説」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
3-3.ほかの部屋を買い取って建物全体を所有してから売却する
連棟住宅の売却で足かせになるのは、家はつながっているのに複数人の所有者がいることです。解体や再建築などをする際は、その人数分の許可および承諾が必要になってしまいます。
そこで、連棟住宅の他の部屋をすべて買い取り、所有者を自分1人にするというのも一つの方法です。
建物のすべてが自分の所有物になれば、連棟住宅を1つの住宅と考えることができるため、次のようなメリットが生まれます。
- 所有者が1人なのですべて自分で決めることができる
- 大型物件として売却を検討することができる
- 一部を賃貸として使用することができる
- 解体して再建築できる可能性がでてくる
- 再建築不可物件だとしても内部だけリノベーションを行うことができる
決定権が1人になると、住宅の使用方法について選択の幅が広がります。活用方法が多くなることで、物件の価値そのものを上げることも可能です。
資金に余裕があれば、おすすめの方法だと言えるでしょう。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 連棟住宅とは、個々の家が隣の家と壁を共用していて、一つの建物としてつながっている住宅のこと
- 連棟住宅は、次のような理由から売却がむずかしいことが多い
・住宅ローンが組みづらい
・工事などの際、隣家の許可が必ず必要になる
・接道状況によって切り離せない場合がある - 連棟住宅の売却方法として、次のような方法がある
・隣家の所有者に購入をもちかけてみる
・不動産会社に買い取ってもらう
・ほかの部屋を買い取って建物全体を所有してから売却する
連棟住宅は、隣家と壁を共有しているため、売りづらいことが多いです。
隣家の所有者も建て替えを希望していたり購入してくれるのであれば、スムーズに売却を進めることができますが、タイミングが合うことは珍しいでしょう。
ただし、連棟住宅は立地の良い場所に建っていることも多いため、一般の消費者に売りにくい場合でも、投資家や不動産会社に高く買い取ってもらえる可能性があります。
まずは、自分自身でも相場価格を調べたうえで、いくらぐらいの売却額が妥当なのかを見極めておくことが重要です。
連棟住宅だけど、どのくらいの金額で売却できそうなのかを知りたいという場合は、ぜひ「イクラ不動産」をご利用ください。
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イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
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