
家の売却を考えているのですが、市街化調整区域にあります。
不動産会社に「市街化調整区域なので安いし、売れない」と言われました……
こちらは、イクラ不動産をご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
※イクラ不動産は不動産会社ではなく、無料&匿名で不動産の相談・会社選び・査定ができるサービスです。
市街化調整区域についてのご相談はしばしばあります。
そもそも、利便性の高い市街地から離れ、郊外や田舎に向かうほど地価は下がっていきます。その途中で見えない線が引かれており、ある地点を超えると市街化調整区域という地域に入ります。
土地や家の売却の際に、大きな影響を与えるのが立地です。立地とは、利便性のことを指すのが一般的ですが、利便性とは別に、土地の区域区分による影響もあります。
市街化調整区域では、利便性が悪い田舎だから価格が安い他にも、買主にとって不都合なことが多く、不動産価格を下げる要因になっています。


具体的には、
- 今、家が建っていても、第三者が購入する場合、売買OKなのか役所の許可が必要
- 家を建てて良い地域ではないので、新築やリフォームでも役所の許可が必要
- 許可が出るかは個別ごとの審査で、買主の建てたい建物やリフォームの詳細な内容が前もって必要
という制限があり、条件が厳しいからです。
こちらでは、市街化調整区域とはなにか、なぜ、市街化調整区域の不動産は売れにくいのか、また、市街化調整区域の不動産の売却方法についてわかりやすく説明します。
だから!

もくじ

市街化調整区域だとなぜ売れにくいのか?
都市計画法では、無秩序に家が乱立することを防ぎ、計画的な市街化を図る必要があるときには、都市計画に「市街化区域」と「市街化調整区域」の区域区分を定められるとしています。そのうち市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域」と定義されています(都市計画法第7条)。
なお、市街化区域や市街化調整区域は行政が定める区域であるため、自分で選ぶことはできませんが、変更される可能性はあります。
建物に対する制限
市街化調整区域は、無秩序にお家や商店などの建物を建てて、市街地を拡大することを防ぐ目的で定められています。ですから市街化調整区域には法律上の制限が多く存在し、不動産価格に影響します。
そのため、市街化調整区域で、家を建てるときには自治体からの開発許可や建築許可が必要で、建て替えも同様です。基本的に、都市計画法に適合する建築物以外は認められません。
具体的には、山林や水田などの未整備の土地を住宅用の土地にするための宅地整備工事のことを開発行為といい、この行為の許可を開発許可といいます。また、すでに家が建てられているなどの理由で開発行為は不要ですが、新築を立て直したり、リフォームする場合は建築許可が必要になります。
都市計画法で建築を認められる建物は、農業や林業、漁業を営む人々が建てる建物などに制限されています(都市計画法の第29条及び法第34条)。
市街化調整区域で開発・建築行為する場合、誰がどのような用途で土地・建物を使うのか、個別に審査されて許可されます。
そのため、現在家があるからといって、他の人も住むことができるわけではありません。
住宅ローンの融資の審査が厳しい
住宅ローンは、もしも返済できなくなったときのために、土地と建物を担保に借ります。
そのため、建築に様々な制限がある市街化調整区域では、必然的に担保価値が小さく、もし、滞納があって差し押さえても売りにくいことから、金融機関は市街化調整区域の不動産の住宅ローン融資に消極的です。
そのため、市街化調整区域の不動産が安くても、資金をある程度用意できる買主でなければ審査が通らないこともあり、売主の立場から見ると買い手が減り、結果として売れにくくなります。
負担が大きく、手続きが面倒くさい
また、市街化を抑制する地域なので、行政は水道・電気・ガスなどのインフラ整備を積極的に行っていません。
電気が届いていなければ最悪は自己負担で敷設しなければなりませんし、ガスは都市ガスではなくプロパン、上水道はあっても下水道整備されていないところも多く、水洗便所ではなく浄化槽の時点で敬遠されるケースもあります。
土地を売る場合でも家を売る場合でも、新築建物を建てたい買主や既存の家をリノベーションを自由にしたい買主は、開発許可や建築許可を受けられるか確認する必要があり、その面倒さと許可を受けられるかどうかの不確実さが市場価値を下げています。
また購入してから、将来的に売却することを考えると買主にメリットが少ないため、市街化調整区域にある家は売却が難しいのが現実で、そのために需要も少なく、価格が下がりやすい傾向にあります。
売却前に確認しておくべき注意点
売れるかどうかは、買主次第になります。
買主の目的に応じて造成や建築に対する許可を申請するため、『行政からその許可をもらえば売れる』ということになりますが、買主の希望の間取りなどを設計するのに時間をかなり要します。
そのため、市街化調整区域にある家を売却したいときに、事前に確認しておくべき注意点を3つ説明します。
自治体の区域指定
2000(平成12)年に都市計画法が改正され、「区域指定制度」が導入されました。これは市街化調整区域であっても、自治体が指定した区域内の土地に限っては、住宅の開発を認めて、都市計画法の許可を可能とする制度です。
区域指定されるためには「隣の敷地との距離が50m以内の建物が40戸以上ある」「市街化区域に隣接している」「上下水道などが適切に配置されている」など、自治体によってさまざまな条件があります。
自治体の条件をクリアして区域指定されていれば、許可は必要であるものの、誰でも家が建てられるので、家が建っている地域が指定区域か確認するようにしてください。
GoogleやYahoo!で[●●市 区域指定制度]と検索すると良いでしょう。
事業によって開発された区域
都市計画事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業など、事業として開発した区域であれば、建築行為への許可が不要となります。役所で調査することができます。
土地の地目
家が建っている土地の地目も、必ず確認しておきましょう。
登記上の地目が、市街化調整区域に指定される前から宅地であるなら、開発許可や建築許可が不要なので売却しやすくなります。固定資産税が宅地で課税されていても、宅地とは限らないので注意が必要です。
しかし、指定後に宅地となり家が建てられたケースでは、第三者が購入する場合には開発許可を新たに受ける必要があります。
家が建っていても、地目が農地であるなら、農家を営む人にしか売却できません。農家以外の人が購入するなら、農地法により農地転用の許可を得る必要があるのですが、かなり厳しく、一番売却のハードルが高くなります。
地目の確認方法については、「土地・戸建の登記簿謄本の見方についてわかりやすく解説!」で詳しく説明してますので、ぜひ読んでみてください。
指定(線引き)の時期
建物が市街化調整区域に指定される前からあるかどうかによっても、売却の条件が異なります。
毎年送られてくる固定資産税納付書を確認すると建物の建築年月日がわかるので、自治体で市街化調整区域が指定(線引きといいます)された日とつきあわせて確認しましょう。もし、納付書がない場合は、役所で固定資産税評価証明書や公課証明書を取得するか、それもないときは固定資産税課税台帳を調べると確認できます。
線引きされた日は、1970(昭和45)年頃が多いですが、自治体のホームページなどで確認するか、役所の都市計画課などの担当部署に直接問い合わせるようにしてください。
既存の建物が線引き前からあるものであれば、行政の都合で市街化調整区域に入れられたことになります。もともとあった所有者の権利を行政都合で制限することはできないため、規制緩和が行われていて、売却するときにも許可は必要ありません。
この場合、用途(住宅なら引き続き住宅)や敷地面積が同じで、規模が同規模(延べ床面積が1.5倍まで)など制限はありますが、条件を満たせば建て替えも可能です。
しかし、線引き前でも増改築したのが線引き後の場合や、線引き後に開発許可や建築許可を受けて建てられたものであるなら、所有者の相続人や近親者などでなければ、過去の許可の権利は引き継げません。
第三者である買主が購入した場合、許可していない第三者が使用することになるため、家の用途を変更したみなされるため所有者の変更だけで再許可が必要になります。
これは、建て替えや増改築の許可は無関係で、所有者の変更(用途変更)に許可が下りても、将来建て替えや増改築で許可が下りないリスクを買主が負わなくてはなりません。


市街化調整区域でも売却できる可能性が高いケース
市街化調整区域にすでに家がある場合でも、次の条件に該当するなら基本的に売却は可能と考えられます。
市街化区域に隣接している場合
都市計画法第34条では、以下の条件に当てはまるなら都道府県の条例などに基づいて開発許可してもよいとされています。
- 市街化区域に隣接または近接している。
- 市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる
- 市街化区域内にあるものも含み、おおむね50以上の建築物が建てられている
すでにインフラが整備されている市街化区域に隣接しているなら、許可することに特に不都合がないと考えられるためです。
そのため線引き後に建てられた家で、買主に開発許可の権利を引き継げない場合でも、今ある家が市街化区域に隣接しているのであれば開発許可がもらえる可能性がかなり高いと考えられます。
ただし、確実に開発許可が下りるとは限らないことは、トラブルを避けるためにも買主に明確にしておく必要がありますし、その前に、具体的にどういう条件なら許可が出やすいのか、不動産会社にしっかりと役所にて調査してもらう必要があります。
市街化区域については、「市街化区域・市街化調整区域とはなにかわかりやすくまとめた」で詳しく説明してますので、ぜひ読んでみてください。
市街化調整区域になる前に家が建てられていた場合
前述したとおり、市街化調整区域が線引きされる前に家が建てられていた場合には、問題なく売却できます。行政の都合によって個人の資産に制限をかけることは、適切でないためです。
しかし、買主が建て替えをするには、一般的に以下のような条件があることは留意しておきましょう。
- 所有者の変更以外の、建築物の用途変更をしないこと
- 敷地の拡大などの開発行為をしないこと
- 住宅については既存建築物の延床面積1.5倍までであること
条件は各自治体によって異なり、条件を満たせなければ許可を得る必要がある場合があります。売却を考えている家や敷地にどのような条件が設定されているのか、なぜ当時は建てることができたのかを、必ず事前に確認しておく必要があります。

用途地域内にある場合
市街化調整区域は、市街化を抑制するために定められた区域であるため、原則として用途地域は定められていません。
用途(ようと)とは「つかいみち」という意味です。用途地域に指定されることにより、その地域ごとに建物のつかいみち(建物の種類)が決められます。例えば、住宅地域には工場を建ててはいけないなどの制限です。
しかし、市街化調整区域であっても、一定規模以上でまとまった宅地開発が許可されて、用途地域が定められている場合があります。
これは1970年〜1980年代にかけて、大規模な土地開発が行われていた、いわゆるニュータウンなどと呼ばれるエリアなどに見られます。その多くは、良好な住環境を保護するための高さ制限などがある「第一種低層住宅専用地域」とされているケースが多いことが特徴です。
市街化調整区域であっても、このような特別な事情で用途地域が定められているエリアにある家であれば、問題なく売却できるケースがほとんどです。
実際、誰が買ってくれるの?
いろいろな制限がある市街化調整区域にある家の売却相手は、どのような人が考えられるのでしょうか?
隣地の所有者
市街化調整区域にある家は、まず隣地の所有者に売却を打診してみることです。
隣家に親族が住む、という理由なら許可がおりる可能性が高いからです。
子どもを近くに住まわせたいと考えているような場合、隣家を購入したほうが、土地を一つにまとめられるので、買主にとってもメリットになると考えられます。すでに開発許可を受けている場合は、家が劣化したときでも、同用途、同規模の建物であれば再建築も可能です。
また、土地を購入することで隣地が道路と接するようになるケースも、所有者にはかなりのメリットになるでしょう。
田舎の中古住宅を探している人
これから新築するのではなく、中古住宅を探している人にとっては、市街化調整区域内であっても特に問題と感じない人もいます。
特に、リフォームや再建築に際し、用途変更をしない、一定規模以下にするなどの条件を守れば許可が不要な場合には、買い手を見つけられる可能性が高くなります。
再建築についての条件は自治体によって異なるため、売却に際してきちんと確認したうえで、買主に説明できるようにしておくことが重要です。
買取専門の不動産会社
市街化調整区域内にある家は、市街化区域内にある家と比較するといろいろな条件があるため売却は容易ではありません。
加えて都市計画法や、自治体の条例などにも精通している必要があり、市街化調整区域にある家の売却は取り扱わないとしている不動産会社も多くあります。
その点、買取専門の不動産会社であれば、知識もノウハウがあるため買取もスムーズです。新築が許可されにくい土地、建て替えが許可されにくい家でも、資材置き場・駐車場、太陽光発電など、市街化調整区域の土地の活用方法や、独自の売却ルートを持っている可能性も高いでしょう。

という方にはおすすめです。
まとめ
市街化調整区域における不動産の売却は、買主の目的で開発許可や建築許可の要件が変わってしまい、売主側でどうにかコントロールできるものではありません。
売れるか売れないかは買主次第になるのですが、許可を得られそうな買主に絞って探すのは現実的に無理です。
したがって、買主が開発許可を得られそうか、事前に行政へ相談・照会してもらう必要があります。それでも確実とは言えないため、許可を得られないときは白紙に契約解除とする特約を条件に売買契約を結びたいという買主も少なくありません。
そのくらい市街化調整区域は難しいのです。
また、市街化調整区域はお家の戸数が少ないため、不動産の流通量が圧倒的に少なく、不動産会社の担当者でも、誤って制度を認識しているケースが少なくありません。
そのため、慣れていない不動産会社では

という会社も珍しくありません。

実利が少ないことも、不動産会社が市街化調整区域を嫌う理由です。
そのため、市街化調整区域に詳しい不動産会社へ売却を依頼することが最も重要なポイントになります。
不動産は売れるまで手数料がかからない成功報酬ですので、市街化調整区域でも相談に応じてくれる会社に相談すべきです。競争相手の少なさから、市街化調整区域を専門にしている不動産会社もあります。
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